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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
60/116

60 犯人が、また一人

「永久の永に、野原の野です」




「存じ上げませんね、永野さん。あなたはマユミさんと、どういう関係ですか」




「マユミは、私を尊敬していました」




「尊敬?」




「マユミは私に救われたんです。マユミは私のおかげで、人生に立ち向かう勇気を取り戻し、前向きに生きはじめた…」




私は声をひそめた「あなた、もしかして…」




「マユミは、私の電話の話をきいて、私も、マユミの過去をきき、そして人間としての交流が生まれた。はは、…」




電話は、また咳き込んだような笑い声をあげた。




「だから、マユミは死んだ。だから、マユミには罰が下された」




「よく分かりませんね、あなたのいってること」




「わかりませんか?はは、とんでもない虚構、虚妄、偽りを、私と共有して、だから、マユミは処刑されたんです。はは、わかりません?」




「海の底の先生か、あなたは?」




「はは、恰好悪い名前だね、気持ち悪いくらい、格好悪いです」




私は少し首を傾げ、急に言葉を投げつけた。




「あなたが、マユミを処刑したっていうのか?」






私の肩に手が置かれた。




内田の手だった。




電話に夢中になっていた私は、全く気づかないでいたが、いつのまにか内田は起上がり、私のすぐ後ろで、電話の会話を聞いていた。




内田の顔は、薄暗がりの中で、ケント紙のように蒼白かった。消える直前のロウソクの炎のように、眼が輝いていた。






「そうです」電話の声がいった。




「…」




私は受話器を手でふさぎ、内田に向っていった。「先生だよ。永野先生だ」




内田は、紙の表面のような無表情で、私の声をきいたのか、きいていないのか、さっぱりわからなかった。




「処刑したというと、殺したということですか」




「はい」




「また犯人登場か。変な事件ですよ、全く。私は手がかりらしい手がかりもつかめずに、うろうろしている状態なのに、犯人と名乗る人が、もう2人も現われた。なぜ、あなたは、僕のところに電話してきたのです。警察に行ったらどうですか」




「まあ、そう私のことを嫌わないで下さい。色々、事情があるのですよ」




「で、自首した青年は、犯人じゃないと、こういうわけですか」




「ええ」




「青年を、殺人の疑惑から救おうと、そういうわけですか」








・・・・・つづく

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