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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
59/116

59 深夜の電話

タオルで内田の顔を拭き、オフィスに連れ戻した。




ソファーに内田を倒して、様子を見た。少しは具合が良くなったようだ。




内田は薄目をあけて、口を動かした。何をいっているのか分からない。目をこらすと、「愛していた」といっているように思えた。




私は内田を見ながら、タバコを取り出した。「少し寝ろよ」といって、ライターをポケットから出した。




「僕は大丈夫だ」と内田が、たよりない声でいった。




私はライターに火を灯した。その火が灯るのと、ほとんど同時に、ベルが鳴った。




電話のベルが、午前1時過ぎの深夜だというのに、けたたましく、鳴った。






・・・・・






私は立ち上がり、受話器に手をのばした。誰だろう、と私は思った。




私に不倫調査を依頼していた老婆、大田刑事、マユミの母…?受話器をとり、こちら玖村調査事務所です、もしもし、と声を出した。電話の相手は無言だった。




内田は電話のベルで目が少し覚めたものの、まだ調子が悪いらしく、ソファーに倒れこんだままだ。




私はもう一度、電話の相手に声を投げた。弱々しい男の声がした。風邪をひいてもがき苦しんでいるような憂鬱な声だった。




「…、こんばんは。そちら、玖村さんの事務所ですね」




「はい。そうですが」




「夜分おそくに申しわけありません」




「どちらさまでしょうか?」




「はじめまして。はじめて、お電話します」電話の声は遠く、消え入りそうな感じがした。「マユミのことでは、大変ご苦労されているそうで」




「…、どちらさまでしたでしょうか?」私は再びきいた。




それには答えず、電話は、さらに聞き取りにくい声でいった。「マユミが死んだのは、しかし仕方のないことなのです」




私はいった。




「あなた、もしかして、マユミさんのお父さんじゃないですか?」




「マユミの父…はは、それは、それは。マユミの父みたいなもんかもしれませんね」




「…」私は一呼吸おいて、きいた。




「宮本さん?」




「宮本?はは、探偵さん、いい推理していますね。宮本、はは」




声は遠くて、笑い声も、小さな咳のようにしか響いてこなかった。




私は少し、いらだって、いった。




「いたずら電話ですか?今、何時だと思っているんですか」




「前途ある青年が、マユミの殺人犯人だといって、自首してきたそうですね」




電話は、また私を無視していった。




「マユミと、どういう関係ですか?」




「知りませんね。私に質問する前に、あなたの名を名乗っていただきたい」




「私の名?ナガノといいます」




「どちらのナガノさんですか」




・・・・つづく



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