表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレフォンライン  作者: 新庄知慧
51/116

51 あの日マユミは

「信じたのに、裏切られた。だから殺した。ああ、そんなことをいってたな」




「俺にばかりしゃべらせないで、おまえからも教えてくれ」




「取り調べるのは、俺だぜ」




「内田についてもっと何か分かれば、俺も、新しい事実に気づくかもしれない」




「そうだろうな」大田は言葉を区切って、タバコをとりだした。「あの学生は、中学、高校時代に、かなり陰惨な、いじめに会ってたらしい。




両親から聞いたんだが。親に理解がありすぎて、過保護な家庭だったんじゃないかと思うね。かなり内向的で、学校社会に適応できなかったようだ。




これは俺の推測だが、あの外見も、かえって災いしたと思う。深海の生物学なんて、そんなものがあるとは俺は知らなかった。




なんか暗い勉強にしか思えないが、そういう道にいったっていうのは、いじめの影響かもな。いや、もともとそういう暗い部分があって、いじめに会ったのかもしれないが」




「それで、内田の犯行を裏付ける物的な証拠はあるのか」私はきいた。




大田は私を見たまま、黙っていた。




「まだ俺に言わせたいらしいな」私は肩をそびやかして、いった。




「いいよ。刑事どの。俺が内田から聞いたところでは、彼はマユミとデートして、彼女にチョコレートを渡した。




彼女は包み紙を破いてどこかに捨てたから、当然、彼の指紋は残らなかったというわけだ。




マユミがどこでそのチョコを食べようが、内田はどうでもよかった。たまたまホテルで食べたということだ。




内田はホテルの部屋には行ってない。デートしたあと、ホテルの前の公園で別れたそうだ。あのテーマ・パークで聞き込みはやったかい?




内田とマユミを見た奴を発見できたか?」




「発見してない」大田は首をふった。「マユミについては聞き込みをすでに行っているが、当たりはない。内田については今日始めたばかりだ。奴らアベックの通ったというコースぞいに聞き込みをしているが」




「その日の内田とマユミのデート・コースは?」




「あの水族館に午後5時から6時ごろまでいて、隣のファスト・フード・レストランで食事。ばかでかいレストランだよ。人が300人も入る。




しかもセルフ・サービスだ。目撃者を捜すのは至難の業だ。8時ごろに外へ出て、海を見ながら散歩して、ベンチに腰掛けた。




彼女にチョコを渡したのが9時過ぎだった。内田は研究室に戻る必要があるからと、その場を去った。マユミはホテルに泊まるといった。




それが10時少し前」




「そこまで細かくは聞かなかった。警察の仕事をとっちゃいけないと思ってね。しかし、渡したその場でチョコレートを食べたらどうするつもりだったんだ」




「それならそれで、一向に構わなかったと、内田はいってる」




「ふん。10時に内田と別れて、マユミは何をしていたんだ?ホテルに帰ってきたのは、たしか午前2時だったな…」私は首をかしげた。




・・・・つづく



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ