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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
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5 マユミはもういない

その店は、ヨコハマ関内駅前の繁華街を3ブロックも海の方へ歩いた先にあった。




勤め帰りの人々にまぎれ、私は夜の街を歩いていた。もう少し歩けば、海岸通りを越えて、海に出てしまうあたり。




歩いていると、港の灯台の光に照らし出され、導かれる貨物船になったような気分になる。




店にたどりついた。




至ってこじんまりした店だった。キャバクラというよりも、きらびやかな喫茶店か、ひょっとすると遊園地のアトラクションのひとつではないかという雰囲気だった。




バーやスナックのネオンが途切れ、地元の新聞社や建設会社のビルが建ち並ぶ通りに面して、海運会社や弁護士事務所が雑居するビルの1階に入り口があった。




周囲には明かりがほとんどなく、暗闇の中に、青と白の照明が、夢のように浮かびあがり、輝いていた。




店の名前は凝ったロゴの英語で書かれてあって、明らかに凝り過ぎのロゴであり、それはまるで象形文字に近く、私にそれを読むことは不可能だった。




昼間に下調べしたところでは、この店は地元のレストランが経営多角化のために始めた。別に怪しい筋の店ではないらしい。地元の優良企業の接待や、そこそこの収入ある若い大人たちの息抜きの場、ということだ。




マリンブルーに塗られた冷たい金属性の扉を開けると、目の前はいきなり白い壁だった。行止まりかと思ってびっくりする。




足元を見ると、螺旋階段が地下へ降りている。階段を降りてゆく。




音楽が聞こえてくる。




昔のロック。エレクトリック・ライト・オーケストラの楽しげで騒々しい音だった。音楽は70年代のロック・ミュージックが中心らしい。




音楽に重なって、男女の笑い声が聞こえる。階段を降りiながら、店の全容を見渡すことができる。




次第に目が慣れて、見ると薄暗い青い闇の中に、ソファーが6組置いてあり、それぞれに三々五々、女性や男性が座っている。




あわせて20人以上。店内は1階と地下1階がぶち抜かれており、その地下1階の底で酒を飲むのだ。




天井から、光が海底探査船の照明のように下に注がれており、ときどき、滑るように動く丸い光もあった。




階段を降りながら、海底の生物たちの生態を観察しながら降下してゆく、海洋探検隊員になったような気がした。




階段を降りきると、黒い男の影が近寄ってきて、いらっしゃいませ、と言い、席へと案内された。指名を聞かれたので、マユミの名を告げた。




マユミは本名でここに出ていたのだ。




マユミはもういない?




それじゃあ、彼女の親友を呼んで下さい・・・・




・・・・つづく



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