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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
48/116

48 自首

内田はいった。




「知ってるよ。マユミからきいた。僕には下らない幻想にしか聞こえなかった」




「…そう」




私はうなずき、頬をおさえた。頬の痛みはだいぶ和らいできた。やっぱり、蚊にさされた傷だったのだ。




ひくひくいう笑い声が聞こえてきた。




この美少年は、どこか頭がいかれているとしか思えない。昨日の私を襲ったキラーと似たような性質の人間かもしれない。




私はそんなことを考えながら、きいた。




「警察に自首する気はあるかね?」




「もちろんですよ」




内田は、私の顔を真正面から見据えて、いった。




私はその瞳を見つめた。黒い瞳が、澄みきって輝いていた。不気味なくらいに。




それは、うっかりすると、こちらの心にウイルスのように侵入し、心の細胞のひとつひとつを完膚なきまでに蝕んでしまう、悪魔の瞳に思えた。




恐ろしく、あまりにも美しい瞳だった。






・・・・・・・・・




「マユミさん殺しの犯人が、僕のところへ、自首してきました」




私は車のシートに腰掛け、携帯電話でマユミの母に話しかけていた。




私はヨコハマ市警の灰色の高層ビルの玄関横に停車していた。太田刑事に内田を引き渡すときのことを思い出しながら電話していた。




内田は終始おちつきはらっていた。




まるで警察署の見学にでもきたかのように、平然と建物の中に入り、出迎えた太田刑事に、丁寧な挨拶をした。




太田は、品定めをするようにう、内田を頭から爪先まで眺めまわし、少し首をかしげて、私を見た。




そして、、立ち話で概略を聞き、私の頬の大きなバンソウコウを見て、どうしたんだ、と尋ねた。




私は蚊に刺されたのだと答え、太田は白けた顔で、ああ、そうかと頷き、もう帰れ、という風に手を振った。




「犯人が自首してきたとき、すぐあなたにも電話したんですが、お留守でした。犯人は、別に逃げ隠れする様子はありませんでしたが、まず警察に引き渡すことにしました。




今、犯人の、あの太田刑事に任せて、警察の前から電話しています。すぐあなたにも、警察から連絡がいくと思います」




電話の向こうは暫く無言だった。私は続けていった。




「犯人は内田亨という、マユミさんの勤めていた店の客です。学生のくせに、一度あのお店に遊びにいって、それからマユミさんと、かなりのつきあいがあったようです」




私は内田の大学のことや、彼の風貌、先に面談したときの印象を語った。




「なぜ、殺されたんですか、マユミは」ぽつりと母はいった。




「内田はマユミさんに、自分勝手な望みを託して、それが裏切られたと考えて、逆上したようです。内田は愛だったといってます。




少し頭がいかれているようです。詳しいことは、まだ分かりません。警察が調べるでしょう。僕も内田のことを調べてみます。




それに、僕も警察に呼び出されるでしょう。内田にさらに詳しい真相をきいてみます」






・・・・・つづく

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