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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
41/116

41 霧のパーキングエリア

車の中に入り、携帯電話のスイッチを押した。車窓を見ると、真っ白な霧の海に閉じ込められたと感じた。電話の向こうから、男の声が聞こえた。




「もしもし?ああ、やっと通じたな」




「どなたです?」




「河合ですよ」キャバクラのマユミの客だった男の声が勢いよくいった。




「宮本マンションに来たっていうのは、あなたでしょ?僕はあの物件に係る融資を担当してたんです。さっき行って、管理人さんと話したんですがね、来客っていうのが、あなたがそっくりだから、気になって電話したんです。あなたでしょ?マユミの調査の関係なんですか」




「そうです」




「あのマンションが、何か関係あるんですか、マユミと」




「そう。彼女の義理の父親が、そのマンションの所有者だったんです。おたくの銀行が、彼に融資していたそうですね、マンションを担保にして」




「そうです。貸し付け金は返ってこなかったから、任意競売で落としましたよ。宮本さんは、結局だめだったみたいで…。しかし驚いたな、あの宮本さんが、マユミの父さんだったとは」




「義理の父親です」




「マユミはまだ見つからないんですか」




「死にました」




「え?」




「自殺かどうかわからないんですが、とにかく死にました」




「そんな…」




しばらく河合は絶句した。私はいった。




「宮本さんの住所、分かりませんか」




「分かりますよ。宮本さんが怪しいんですか」




「参考人ですね、重要な」河合から宮本の住所を聞き出した。しかし、それはあの根岸の競馬場の近くの住所だった。




その住所をきいて、私はいった。




「ありがとう。しかしここはすでに当たってみました。もう引っ越されたみたいです」




「そうですか。それは残念。しかし、宮本さんの情報は、また入るかもしれません。うちの銀行とつきあいはまだありますから。何かわかったら、連絡しますよ」




「ありがとう」




「しかし、あのマユミの父親だったとは、驚いたなあ。しかし、面白い…といっちゃあ失礼かな。不謹慎ですね。でも、面白いな。何かあったら、また連絡しますよ。今はどちらにいらっしゃるんですか?何の調査なんですか」




「マユミの実の父親と会いました」




「そうですか。まあ、がんばってください。僕もマユミに代わる接待役を捜すことにします。ああ、また不謹慎な発言だな。ごめんなさい。ではまた」




電話は切れた。




私はイグニッション・キーを回し、ホンダを目覚めさせ、霧の駐車場に別れを告げた。






・・・・・つづく



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