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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
37/116

37 このマンションもう他人のもの

「本当に知らないの?まあいいや、不動産屋に行っても無駄足になるだけだし。ここは、もう宮本さんのものじゃない。




3年前に宮本さんは亡くなったし、私は宮本さんから、ここの管理を任されたんだけどね、まあ、名義はあの典雄という一人息子のものになってたんだよ。




で、何をやらかしたんだか知らないが、いつのまにかこの土地建物には、そっくり抵当権がつけられててね、あの一人息子は借金が払えずに、この建物はもう人手に渡ってるんだ。




私ももうすぐここを出てかなきゃならないんだよ」そう一気に言って、老人は私をじろりと睨んだ。「あんた、あの息子の友達か。芸能関係の人かね」




「いいえ。ちょっとした知り合いです」




「まあ、いいや。だから、ここはもうだめなんだよ。もうすぐ壊されて、パチンコ屋になるんだ。上の方は、また賃貸マンションにするそうだけど、今の家賃の倍になるんだよ。




とてもじゃないけど払えない。ここに住んでるみなさんは、みんな保証金を貰って、ここを出て行くよ。雀の涙にしか思えないけどね、あんな保証金」




「新しい大家さんは、どちらでしょうか」




「湘南総合開発。どんな会社か私は知らない。宮本の息子さんは、湘南銀行から借金したっていうから、なんか関係あるのかね」




「そうですか。失礼しました。その、総合開発にあたってみます」




「それより、あんた、あの息子の行方は知らないのかね。もう、ご両親の3回忌も何もしてないんだよ。たまには墓参りにでも行けって、言ってやって下さいよね」




「はい。ご両親は、ご病気か何かで亡くなられたんでしょうか」




「心臓発作です。心臓が弱かったんだ。おとうさんが3年前に亡くなられて、すぐ3か月あとに、お母さんもね、やっぱり心臓だった。




おとうさんは真面目一本の会社員だった。小さい会社だけど、そこの役員にまでなったんだ。ここはもともと宮本さんの家の敷地だったんだ。




私は、あのおとうさんには世話になったよ。でも、もうこれで宮本家も終わりかな」




老人は、遠くを見るような目つきでいい、そして大きな声で私にいった。「墓参り、ちゃんと行けって、言って下さいよ」




「はい、わかりました」私は答えた。




車に戻り、私はメモに面談記録を簡単に書きつけた。




湘南総合開発、湘南銀行、劇団、どのルートをたどるのが、宮本への最短距離かは、今の所は不明だ。車の中からマンションの写真をとった。






・・・・つづく









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