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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
36/116

36 話にもならないよ

「さっきもいったように、マユミさんについては、自殺か他殺か不明です。他殺としても、決して宮本さんが容疑者と決まったわけではないんです。




ただ、宮本さんは義理の娘のマユミさんに甚大な影響をあたえた人物だということはわかっています。彼から話を聞けば、マユミさんの死について何か掴めるのではないかと思って捜しているんですよ」




私は山瀬の目をじっと見つめていった。




「宮本さんの消息を知る方法はないでしょうか」




「それはこっちも知りたいことですよ。まだ未収の家賃があるんです。宮本を追い出したんですが、残りの未収家賃を取りたてなければならない。




しかし、奴の居場所は分からない。どこかに雲隠れしてしまったんです。この不景気に、ひどい客をつかんだもんだ」




山瀬は溜息をついて、上を向いた。




私も空を見上げた。相変わらずの曇天だった。重たい灰色の雲がもう百年間もそこに居座っているという感じがする、憂鬱な空だった。






・・・・






天気は小雨から霧雨に変わった。




私は山瀬から聞き出した、宮本の所有するマンションへとホンダ(車)をすすめた。市の内陸部へとすすむ国道を30分ほども走った。




京浜急行の駅が見えてくる。紅色に塗られた電車が走る高架をくぐりぬけ、ごみごみした駅前繁華街で渋滞にまきこまれた。




タバコに火をつけて、カーラジオのスイッチを入れた。関東地方には秋雨前線が停滞しており、降ったり止んだりの天気が明日いっぱい続く。




天気予報のアナウンサーの声が、雑音とまじりながら憂鬱そうに訴えていた。




トタン屋根の安っぽい住宅が立ち並ぶ通りを曲がり、3ブロック進むと、5階建てのビルディングが、あたりの小さな住宅が密集する風景には場違いな感じで現われた。




ホンダを止めて、管理人室へ行った。




「ごめんください」




管理人室のガラス窓を軽く手でたたきながら、私は声をだした。




「あの。空き部屋があると聞いて。お部屋をみせてほしいんですが」




ガラス窓が開き、目が顔の皺の一つにしかみえないくらい細く、頭髪が真っ白な、70歳くらいの老人が顔をだした。




「何?部屋借りるの?」




「そうです」




「私は雇われてるだけでね、そういう話は不動産屋さんに言ってもらわないと」




「宮本さんには、もう話をつけてあるんですが」




「宮本さんなら、もう亡くなったじゃないですか。3年にもなるよ」




「息子さんの方ですが」




「何だ。じゃあ、だめだよ、話にもならないよ。あなた、何も知らないんだね」




「何かあったんですか」






・・・・・つづく







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