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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
31/116

31 ラウンドアバウト

マユミの実の父は、真紀子が看護学生だったころ、ヨコハマの大病院の医師だった。




その病院の名は私もきいたことがある。かなり有名な病院で、刑事事件に係る死因調査や解剖といった警察関係の仕事も請け負っていた。




医師の名は篠原惇。真紀子と関係したのは篠原がが35歳のときだった。妻子がありながら、真紀子と関係した。




しかし、その後真紀子とは全く連絡がなく、どこでどうしているのか全く不明だった。




マユミを犯した父親は、劇団くずれのフリーターだったという。




名は宮本典雄。




今、どこで何をしているのか、これも見当がつかない。真紀子より2歳年下で、現在34歳になるはずだ。




いずれの男についても、写真も手紙も何もなかった。永久に、2度と会わないつもりで、真紀子はこれらの男にまつわるものは全て廃棄してしまったのだった。




私はコーヒーを飲み、マユミの写真をもう一度見た。




「マユミさんのボーイフレンドとか、女性の友達とか、何か気になることはなかったでしょうか。繰り返しになりますが。




この前うかがったときには、マユミさんの、中学生のときの暗い過去の話は知りませんでしたから、その事件と思いあわせて、考えてみてください」




「男の子から電話や手紙は何度かありました。もてましたから。




でも、ああいう過去があって、普通の子みたいに、男の子と遊んだりできない体質になっちゃったんじゃないかな。とてもかわいそうでした」




「彼女に失恋して、思いつめた子とか、いませんでしたか」




「マユミに失恋。あの子は恋とか愛とかに行き着く前に、そういうこと自体を拒絶してしまってたでしょうから、男の子を傷つけるとしたら、やっぱり普通とは違ってたんじゃないでしょうか」




「マリンクラブの客たちに聞いても、彼女を嫌ったり怨んだりする人はいなかったです。店の同僚にも受けが良かった。ご自身がひどく傷ついた経験をお持ちですから、人にしてはならないことというのが、良くわかってたんでしょうね」




続けて私はいった。




「マユミさんを救った、電話の先生というのは、どうです。何か言い残したことはありませんか」




「市役所の電話相談の人。さっきも言いましたように、くわしくは知らないんです。すみませんね、手がかりらしいものがなくて」




真紀子は申し訳なさそうにいった。




「いえ、手がかりがなくても、調査するのが私の仕事ですし、手がかりは十分にありますから」




私はマユミのノートをめくってみた。




どの文章がいつごろのものか、よく分からないノート。




さっきも目にとまった、世界を呪う乱れた文字が再び目に入った。




世界を呪う。マユミをそんな風にさせた、あいつとは誰か。




私は忙しく考えを巡らせて、調査方針を固めた。まずは動いてみよう。動きながら集め、待つのだ。材料はまだ不足している。






・・・・・・・・つづく



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