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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
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3 目のさめる手付金

「あの子なりの選択だったんです。それはあの子の人生ですから。やっぱり、あの学校は違うって。あたしのいる所じゃないって。




それに、さっきも言いましたけど、あたしの商売が、こうですから、やっぱり無理なんですよ、お嬢さん学校は。




あの学校よりも、もっと別のところで、別の勉強をしようとしたんです」




「そうですか」




私はこの女性に対して、色々意見を述べたい気もしたが、それは仕事外のことだと思い女の説明にただ頷いた。




「だから、わからないんです。なんで行方不明にならなきゃいけないのか」




話の大筋は見えたようだ。依頼人の家庭や人生のすべてに立ち入って聞き出す必要はない。娘を捜し出すのに必要な情報があればいい。




私はその他のこまかな情報、マユミの行きそうな所、交友関係など聞き取り、メモしながら、またあくびをかみ殺した。






「本当にお願いします。これは、手付け金です」




彼女はバッグから札束をとり出した。眠気が飛んだ。ぶ厚い札束。かみ殺したあくびが、喉につかえた。




「そんなにお金はいりません。料金は、今、説明します」




「いいんです。これくらい。とにかく、一刻も早く、娘を見つけて下さい」




彼女は札束をテーブルの上に置いて差し出した。札束は、新札で、湘南銀行の紙の帯をしていた。300万円はあろう。




「あなたが、腕利きの探偵さんだということを聞いてきたんです。あなたを信頼しています。とにかく、あの子はかわいそうなんです。




早く見つけて下さい。何かに悩んでいるんです。救い出してあげないと」




女は今にも死にそうな目つきで、テーブルの一点を見つめた。




女はついにその札束を私におしつけて帰った。きわめて深刻で、きわめて景気のいい客だ。




私は眠気のさめた顔でテーブルの上を見ながら思った。




自分はそんな名探偵だろうか。女の置いていった札束を、とりあえず金庫にしまいながら考えた。探偵という職業に転職してから3年になる。




確かに成績はいい。静かに評判がひろがっているのだ。それにしても、いきなり、こんな多額の手付け金はないだろう。






私はコーヒーを沸かし、ブラックで飲みながら、仕事の段取りを考えた。




それからメモを見直した。彼女の言ったことの裏もとる必要がある。




依頼人が故意にせよ過失にせよ、事実に反することを言っている場合がある。




事実関係を確認したうえで、依頼人の要望に沿って、明らかにすべき必要で十分な事実を調査・判明させなければならない…。






・・・・・つづく



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