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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
28/116

28 マユミはなぜ死にたかったのか

「そのノート、あとで見せてもらえますか」




「ええ、もちろん」




料理が運ばれてきた。よほど空腹だったとみえて、真紀子は忙しくナイフとフォークを動かし、がつがつと食べた。私も急に空腹感に襲われて同じようにして食べた。




「ここ、いいでしょう。私はここに来るとおちつくんです。他の人と来たのは、マユミだけです。マユミ以外では、あなたが初めて」




「なぜ僕なんかを」




「あなたしか頼る人はないですから。あなたはいい人ですね。私はこういう商売をしてますから、いい人と悪い人の区別はつきます。




私は悪い人にばかりだまされてきた。結局、私が悪かったんでしょう。でもマユミがあんな目に会うなんて許せない。絶対、犯人を見つけて、




復讐したい。お願いします」




「わかりました。一生懸命やります。そのために、マユミさんのことをもっと知りたいのですが。大事なことを隠したりはしていませんね?」




「はい?」




私は真紀子の目をじっと見つめた。




「隠してなんかいませんよ。これからお話ししようと思ってたんです。お腹もいっぱいになったし。他の人に話すのは、これが初めてです」




「中学生になったばかりのころに、マユミさんが自殺しそうなほど悩んだのはなぜですか」




「ええ。…探偵さん、どうしてだか、分かってたんじゃないですか…。いえ、そんなはずは、ありませんよね。…あの子は、父親に犯されたんです」




そう言って彼女は目を閉じた。




「順を追って話してくれませんか」私は冷静に言った。




「ええ」彼女はグラスの底に残ったビールを飲み干した。




「私は、これでも昔は看護師の卵でした。学校にいってたんです。それで、実習で病院なんかにも行くでしょう。




で、そこの先生との間にできたのが、あのマユミだったんです。19のときでした。結婚してくれるって言ったし、私も産みたかったんです。




でも、その医者は逃げた。だから、私の方から別れてやった。私の方から捨ててやった。看護婦もやめた」 私は黙って彼女の話をきいた。




「看護師とソープランドって、似てるんですよ。仕事が。どっちも人体を扱う仕事ですから」




「そうですね」




「で、私も馬鹿だった。やっぱり苦しくて、店で知り合った客。すごいハンサムでしたよ。前に言いましたよね、なかみのない男。




役者志願だったんです。私は結婚した。マユミの遊び相手にもなってくれると思った。でもマユミはあの男を好いてはいなかった。






・・・・・つづく



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