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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
27/116

27 彼女は立ち直っていた

「お宅で奥さん待ってらっしゃるの?」




「まあ」




「申し訳ありませんね。でも、調査に役立つと思うこと、色々お話したいんですよ。でもお腹すいちゃったし。食事しながら話したいんです」




「そういうことでしたら結構です」




真紀子は車をスタートさせた。




車は公園から5分ほど走った。ハリウッドの映画セットのような家々の間を通り抜け、坂を上り降りした。




私もこのあたりはドライブすることが多かったが、このあたりが、こんなに懐の深い街とは知らなかった。




狭い道を迷路を縫うように車は走り、大きなモミの木が玄関の門に立つ洋館の前で止まった。黒い木に飾り付けられた豆電球が点滅していた。




昔外人が住んでいた家を改造したレストランらしかった。車を降りて、彼女に導かれるままに私はその洋館に入っていった。




「あまり場所が良くないでしょ。人もあまりこないんですよ、ここ」




彼女は言いながら、黒いマホガニーの扉を開けた。1950年代のアメリカ映画に出てくる執事のような老人がお辞儀して彼らを迎えた。




店の中に客はいない。執事は心得たように彼等をそのまま2階へと彼を連れていった。




大きな窓があり、黒い森と底が光る夜空が見え、マリンタワーが黒い森の中から、まっすぐな樹木のように立っていた。




タワーから出た蒼白い光の線が、夜空を一定の間をおいては規則正しく仕切り流れていった。




「こんな所があるなんて知らなかった」




私は彼女に言うでもなくつぶやいた。




私はメニューを見た。最近どこでもお目にかかる本格的な洋風料理というよりも、昔の洋食といった感じの、わかりやすい名前の料理が並んでいた。




「飲み物はビールでいいですか」




「ええ」




彼女は執事を呼び、ビールを注文し、私の食べたいものをきき、自分のとあわせて注文した。運ばれてきたビールを飲み、彼女は窓の外を眺めた。私はいった。




「あなたが、マユミさんが自殺ではないと感じるのはなぜですか」




「あの子しっかりしてますから。そりゃあ、かわいそうな目に会って、大変だったんだけれど、完全に立ち直ってたんです。何か心に傷のつくことがあったんだと思いますが、大丈夫ですから。信じてます」




「いい先生に会ったって聞きましたが。マリンクラブの女の子たちは、海の底の先生と読んでました。学校の先生ではないそうですね」




「私もくわしくは知らないんです。市役所の「いのちの電話」の人みたいです。・・・ひとのいのちを救うための電話相談ってあるんですね。




ちょうど探偵さんくらいの年齢の人みたいですよ。すごく励まされたみたい。あの子が死んで、あの子の机の中にあったノートなんかにも書いてあった」






・・・・・つづく



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