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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
26/116

26 警察はダイキライ

「直感で物を言うのは危険です。しかし、」




私は真紀子の迫力を感じて言った。




「しかし、少なくとも自殺とは思えない。あなたの話とか、聞き込みをした印象だけがたよりですが」




「あたしも、そうなんです」




「でしたら、その手がかりになるもの、警察に話されたほうがいいです」




「警察は大嫌い」




「そういう方は多い。僕の依頼人にも多いです」




「探偵さん、また調査して下さらない?」




「僕に仕事をくれるのはありがたいですが、警察ほど力になれるかどうかわかりません」




「警察にたのんだら、言いたくないことも皆いわなきゃならないでしょ。この何日かの間も、やなことばっかり聞かれた。マユちゃんの部屋も覗かれた。あたしの家も」




真紀子は警察の捜査によほど閉口し、いやな思いをしたらしい。顔を歪めて眉間に深いしわをよせた。




「よくあんな高校に入れたもんだ、とか。あたしの客のこととか」




しばらく沈黙が続いた。かすかに汽笛の音がして、静かな風がそよいだ。




「あんな連中に、あたしたちのことを言えるもんか。だいじなことを言えるもんか」




やや間があって、ぽつりと真紀子は言った。「それじゃ、あの子があんまりかわいそうだ」




「しかし、やはり警察は組織です。機動力もあります。人材もそろってます。それに僕は殺しのことは専門じゃないし」




「嘘でしょう?あなたの噂はきいてます」




彼女はハンドバッグから紙包を出した。手付金と同じくらいの厚さの札束だった。彼は慌てて言った。




「困ります」




「お願いします。あたし、あの子がかわいそうなんです」真紀子は必死だった。




「いいから、それはしまって下さい」




「お願いしますってば。どうしてあの子が死ななきゃならなかったのか、本当のことを調べて下さいよ、ねえ」




「いいから、しまって下さい。わかりましたから。ありがとうございます。やります」




私は観念した。自分が、本当は仕事が欲しいのに、もったいぶっている嫌な奴に思えてきたからでもあった。




しかし、この金を受け取るわけにはいかない。「そのお金は、マユミさんの葬式代にして下さい」




彼女はやっとその札束をバッグにしまった。




「ありがとう」真紀子は安堵して礼を言った。「ああ。おなかすいちゃった。探偵さん、ごはんまだでしょう。ご馳走しますよ」




「いえ、結構ですよ」




・・・・・つづく



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