表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレフォンライン  作者: 新庄知慧
25/116

25 探偵の直感を述べよ

車は闇夜へ浮上するように、軽々と山手の坂を登った。ネオンの街が後ろへ音もなく遠ざかってゆく。




公園の駐車場に止まると、真紀子は緑色のハンドバックからタバコを出した。車の窓を開けてタバコに火をつけた。




夜の公園は、がらんとしていて、持主に忘れ去られたとしか思えない古ぼけた黒いバンが1台駐車しているだけだった。




港の夜景に底から照らし出された夜空に、星がまばらに光っていた。黒い樹木の影が駐車場を取り囲んでいた。




私の電話を受けて、真紀子はこの車で私のもとに現れた。




話はドライブしながらしようと有無を言わせぬ調子で誘われた。言われるままに車に乗せてもらい、ここまで来た。




しかし、発車して後、ここまでの2人は何も言葉を口にしていなかった。




私が口を開いた。




「おわびします。役に立てなくて。これはお返しします」彼女から受け取った手付け金を差し出した。




「まず、捜査の結果を教えて下さい。マユミについて、どんなことがわかったですか」




手付け金も私も見ず、真紀子は前を向いたままいった。




私は捜査を開始して4日間のことを手短かに話した。マリンクラブ、マリンクラブの客たち、ハーバー・ホテルを指示した手紙のこと。




「結局、何も成果なしでした。娘さんは亡くなってしまった」




私は頭を下げて再び謝った。




「これで私もお払い箱です。お返しします」札束の袋を真紀子の手に渡そうとした。




真紀子は煙を静かに吐き出しながら、身じろぎもしなかった。表情もなく遠くを見ていた。そして突然いった。




「マユちゃんは、殺されたんですか」




「自殺の線が強いと、警察は言ってます。あの、現場にいた刑事から電話がありました」




「自殺?」




「あるいは、事故死かもしれないと。殺人の線は薄いようです。いずれにせよ、警察も本当のところは何もわかってないでしょう」




「何で死んだか、全くわからない・・・!」




彼女は頭をふり、肩を落としていった。




「真相を究明するには、警察にも協力しないと。あの刑事も、あまり愛想がないかもしれませんが、真面目にやってくれます。




私は、最小限のこと以外は何もしゃべってません。仕事の上で知ったことは、決していいません。




でないと、依頼人の秘密を守るという契約に違反します。




マユミさんの死因の究明には、あなたの口から手がかりを提供してやる必要があります。




もちろん私も、あなたの許可があるなら、あの刑事が言っていたように、市民として協力します」




真紀子はそれには答えず、いった。




「マユちゃんは殺されたんでしょうか」




「それは…」私は首をひねった。




「探偵さんの直感ではどうですか」




強い口調で彼女は訊ねた。






・・・・・・つづく





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ