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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
21/116

21 警察は嫌い

「その通りです」大田刑事はいった。




「殺人の疑いもありますから、検死にまわさせてもらわざるをえない」




「マユちゃんを切り刻むんですか」




「お母さん、理解してください。もし、殺人だったら、犯人を早くつかまえなければならない。そのためには証拠や手がかりがいるんです」




マユミの母は茫然とした顔をして落ち込んだ。抵抗する気力もないようだった。またマユミのそばに行き、娘を優しく抱きしめた。




「かわいそうなマユちゃん」




小さな泣き声が聞こえ、それはすぐに大きな泣き声に変わった。抑えていたものが堰をきったように流れ出したという感じだった。




私は下を向き、また深々と頭を下げた。くやしさがこみ上げて来た。大声で自分の無能をののしりたい気分だった。






「だいぶ入れ込んでるみたいじゃねえか」




泣き疲れて、ぼろくずのようになったマユミの母が、検死にまわされるマユミの死体といっしょに部屋を出ていったあと、部屋に残った大田刑事は、私を睨みつけながら言った。




続けて大田は言う。




「おまえの知ってることは教えてくれよ」




「もちろんだ」彼は大田をまっすぐ見て言った。




大田はきいた。「自殺なのか。これは。おまえの見解はどうだ」




「わからん。本当だよ。判断できるような材料はまだ仕入れてなかった」




「しかし、家出人だったんだろう」




「さっき、あのお母さんも言ってたとおり、旅行の帰りが遅かったんだ。たしかに家出かと、あのお母さんは疑ってないでもなかったが、旅行だと俺は推理してた。あの人にもそう言ったよ。このホテルはマユミさんのお気に入りだったというんで、ひょっとしたらと思って捜しに来たんだ」




「それだけか」




「それだけだ」




「立派な私立探偵だ。依頼人のプライバシーはきちんと守るんだな。商売も繁盛するわけだ。俺も何かあったら、おまえに頼みにいくことにするよ」




「何だ。疑ってるのか。嘘は言ってないぞ」




「嘘は言ってない。その通りだろう。しかし不要なことは捨ててしゃべったということだろ」大田は溜息をついていった。




「まあ、不要なことは普通、しゃべらないもんだ」私はあっさりといった。




「まあいい。あまえの性格は百も承知だ。ところで、あの母親も不要なことはしゃべらない口だな。警察が嫌いだね」




・・・・・つづく

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