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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
20/116

20 自殺か他殺か

「お嬢さん、何かでとても悩んでいらっしゃったんでしょうか。家出なさってたんでしょ」




大田刑事がきいた。




「ちょっと旅行に出てただけですよ」




マユミの母は答えた。




「そうですか?」大田は彼の顔を見ながらいった。「こちらの探偵さんに捜査を依頼されてたんじゃないんですか」




「……」




マユミの母は娘の死体を見たままだまりこくった。




私は無言だった。大田が苦笑して私にいった。




「さっき、あやまってたじゃねえか。おまえ」




「旅行の帰りが遅かったから、探偵さんに頼んだだけです」マユミの母が、うるさそうに言った。大田刑事が母にいう。




「お嬢さんが亡くなったばかりだというのに、つべこべ言われるのもイヤなこととは思いますが、お母さん。




自殺か他殺か、ことの真相を調べるのが我々の仕事なんですよ。手がかりは出来るだけ早く集めて、一刻も早く間違いのない捜査を開始しないと。




もし殺人だとすると、このへんにまだ犯人はいるかもしれない。はやくつかまえないと。




この探偵くんだって、一市民として我々の捜査に協力する義務がある」




大田は私を指差していった。




「私には職業上の守秘義務ってものがあるよ、刑事さん」私はすかさず答えた。




「そうかよ。とんちんかんなことを言うなよ」大田はまた苦い顔をしていった。再び母にたずねた。「娘さんは、自殺されるような心あたりがありますか」




「いいえ」母は答えた。




大田は、そのほか、マユミについて、職業、性格、最近の行状など、いくつかの質問をした。母は拒絶するでもなく、協力するでもなく、最小限のことを答えた。




私に捜査依頼をしたときとは大違いだった。娘の死に接して放心状態であったからだろうが、それにしても警察によほどの嫌悪を抱いているのだと私は思った。




「そうですか。わかりました。また、ご協力下さい。大変もうしわけありませんでした」大田はあきらめて、質問を終えた。




マユミの母は、私に向かって訴えるようにいった。




「探偵さん、お葬式のやりかたって、どうするんでしょう。私、なんにも知らないの。すぐ連絡しないと、だめでしょう?




マユミが腐っちゃうわよね」




私はそれに答えていった。




「残念ですが、お母さん、しばらくは、警察はマユミさんを帰してくれません」




「え?」






・・・・・つづく



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