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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
17/116

17  彼女はよくここに来る

翌日は昨日よりもよく晴れた気持ちのいい天気だった。




ハーバー・ホテルの屋上のカフェ・テラスで、私は朝食をとった。アメリカ西海岸の青空を思わせる、近くて大きな空が広がり、海が見え、遊園地の乗り物や水族館の建物が、日の光を浴びて輝いている。




7つほどの白いテーブルがテラスにはあり、3つのテーブルに人がいた。老夫婦、女学生の3人連れ、そして私だ。




今朝は9時頃に目を覚ました。ロビーに降りていき、マユミの姿がひょっとして見えないかと歩きまわった。フロントには昨日の男はおらず、丸いメガネをかけたロングヘアーの女性が、ぼうっとして立っているだけだった。




ロビーでタバコをふかしながら新聞を読み、ときどきロビーに行き来する人々に目をやった。そこにそうして1時間も座っていた。




OL風の20代後半と思われる女性が眉間にしわをよせたまま通過した。




背が低くサッカー・ボールみたいに太った中年男と爪に赤いマニキュアをした若い女が、彼の斜め向かいのシートに座り、ひそひそ話したり笑ったりしていた。




ホテルのメイドが何かヘマをやったらしく、慌てて走っていった。




新聞には今年の国の予算の概算要求内容がでており、高名な物理学者が亡くなり、芸能人が2組離婚したことがわかった。




ロビーの窓から海が見える。しかし厚ぼったいガラス窓を通して見えるその海は、いまひとつ生彩を欠いていた。




マユミならこんな海に満足しないだろう。フロント横のプレートを見ると、屋上にブレック・ファストのとれる場所があると書いてあった。




フロントへ行き、まだ朝食がとれるか確認し、そのフロントレディにもマユミの写真を見せた。丸めがねの女性の瞳が何か知っているように反応した。昨日のフロントに比べてガードが甘い。




「この方がですか・・・」




「そうです。お心あたりがあるんですね」




「昨日も、その件はうかがったようなんですが、何でしたらその、ご依頼されたお母様といっしょに来てくださらないですか」




「では、彼女はよくいらっしゃるんですね、ここに」




「お答えはできないです」




「では、おっしゃる通りにします。ただ、昨日も申し上げたように、だいぶ思いつめている子のようなんで、ここに来たら、とにかくご連絡いただけませんか」




「はあ」




「感受性の強い子のようなんです。お願いします」




「上の者に諮ってみませんと。私ではなんとも」




「諮ってください。お願いします。僕はとりあえず、朝食をとってきますから。上で」




「はあ」




「また来ます」






・・・・・・つづく

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