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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
12/116

12 ハーバーホテルへ

「危ない感じがしたな。あの子、頭いいでしょう?」




「市内の名門高校を中退みたいですよ」




「感じなくてもいいことを、感じちゃうみたいなとこがあるように思ったな」




「何か、お気づきのこと、ありましたか」




「男かな。でもなあ、彼女、すごい美人だったし。すごいんですよ。ご存じですか」




「顔写真なら、持ってます」




「美人でしょ?」




「ええ」




「そうなんだ。でも男を泣かせるような、不埒な奴と違う。苦労して暗い過去をもって、それで、頭がいい。強烈な美貌。




なんか、ある日、行方をくらましても当然な気がするなあ。それで、ある日、死体になって発見される」




「ええ。母親は泣きますね。それを阻止するのが私の仕事で…」




「いや、すみません。美人薄命って言葉、思い出しちゃって。考えられるのは、彼女を追いかける変態男だな、これは。そいつにさらわれた。




あ。それで、僕を調査に来たってわけですか?」




「いえ、そんなことは」




「疑われても仕方ないけど、決してそんなことないですよ、僕は。誤解されないように言っておきます。僕は水商売の人、嫌いですから。




あくまで仕事だったんですから…こんな風にムキになって言うと、また疑われるかな」河合は笑った。




「そんな、疑うなんてこと、ありませんよ」




「いや、どうも。ごめんなさい。喋りすぎました。そうですね、でも、やっぱり、彼女、死にたいような口ぶりだったな。




過去のことが、なにかぶり返したって感じで。それが何かは、僕にはわかりませんが。




そう…あ、思い出しました。彼女、あのハーバー・ホテルに住もうかなんて言ってましたよ。あそこなら、毎日海を見ることができる」




「ハーバー・ホテル」




「金沢八景の方にあるでしょ。とにかく、探偵さん、よろしく。彼女が元気で戻ってきてくれないと、僕の接待業務にも支障をきたしますから…」




・・・・・




捜査を開始して3日間に、この他に3人の男と面談を試みたが、断られた。




まあ、それが普通だろう。キャバクラの客としての事情聴取になんて、応じたくないという心情は理解できる。そして手がかりとなる男は、あと、まだまだうんざりするほど多数いる。




事務所に帰って、エリス高校での聞き取り結果、マリンクラブの客との面談のありさまを反芻した。




窓の外を見ると、小雨が降り始めていた。心地よい、水の落ちる音がする。




マユミの顔写真を内ポケットから取り出して見直した。たしかに美しい。そして、私はその顔が、どこかで見た顔に似ていると思った。




誰だろう。昔読んだ、お伽話のお姫さまだろうか。早くこのお姫さまを見つけ出さなくてはならない。






・・・・・・つづく



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