表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テレフォンライン  作者: 新庄知慧
112/116

112 よろこびにうちひしがれ

キラーは続けた。




「こんな世の中だよ。だから私は、自分の趣味に合ったやり方で、世の中に制裁を加えるべきだと思ったんだ。これは楽しい企てだ」




「制裁…」




「そうだ。私は、お察しの通り、河合も、篠原も憎かった。まず河合だ。とんでもない奴だ。学年は同じだが、一応、私の弟だ。




しかし、河合母子と比べて、私の母も私も、虫けらのような扱いを篠原から受けた。あの河合までもがそれに同調して、私を虫けら扱いした。




ひどい奴だ。あんな奴がこの世に生きていてはいけない。永野は甘い。内田は弱虫だ。河合を真に救いたいなら、この世から消すしかないんだ。




河合…あいつは、マユミを言葉巧みに誘い出した。自分も、永野先生から救われたんだとかいってね。そして別れる間際に、毒入りのチョコレートを渡した。




探偵さん、あれは、殺人には違いないが、正確にいうと、自殺の教唆だ。河合は、マユミを、もう自殺するしかないところまで、言葉で追い込んだんだ。




永野先生のこと、内田の過去、そして内田から聞いたマユミの過去のこと。総動員して、マユミを傷つけつくした。そして、冗談か本気かわからない顔で、毒入りだといってチョコレートを渡した。




河合はある意味で、マユミを知り尽くしていた。多感な彼女のことを。そして、やっぱりマユミは毒を食べてしまった。私はそれを河合から聞いた」




キラーは饒舌だった。




「しかし、あのあと、ついに内田も我慢できなくなった。内田にしちゃあ、大変な勇気を出したな、あの晩。鉄パイプで、河合に、殴りかかったんだからな。




しかし、ご承知の通り、だめだった。殺しを仕上げたのは私だ。大きなハンマーを使ったよ。凶器は今、海の底だ。あのテーマパークの海に放り投げた。




河合の頭部が炸裂して、脳漿が飛び散って、あの馬鹿がしゃっくりみたいな悲鳴をあげて、鼻水や涙を飛び散らせて、ぶざまで、本当に痛快だったよ。




私は、あいつの頭をたたき割りながら、ものすごく興奮し、快感だった。今でも思い出すと、胸がぞくぞくする。どうしてもっと早く殺らなかったんだろうと、後悔した」




キラーは喜悦に打ちひしがれた顔で、よだれを流さんばかりの笑顔で語った。




「そして篠原だ。あの医者だ。女たらしの俗物だ。自分の妾の子に殺されるなんて、傑作だと思うだろう?




でも篠原の殺しは、あんまり面白くなかった。あのとき、あんたにも会ったね。でもまあ、それなりの快感はあったな。スマートな快感だな。




あの馬鹿はあのとき、何かにいらいらしていた様子で、部屋の中で立ち上がったり、座ったり、歩き回ったり、狙いにくかった。




額のあたりを撃ったんだが、撃った瞬間の顔はスコープで見たんだ。汚い水の入った、古ぼけた風船がはじけた感じかな。




「びしゃっ」って感じかな。もちろん音なんか聞こえない。側へ行って、もっと派手に銃撃したかったが、部屋から早々に退散しなきゃならなくてね。




残念だった。でも胸のときめきはある。あまり贅沢をいうべきじゃないだろう」




キラーは、満面に笑みを浮かべて、嬉しそうに喋っていた。




「いずれにせよ、警察じゃあ、こんなに正確で快楽的な制裁は為し得ない。100年たってもだめだろう」






・・・・・つづく







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ