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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
11/116

11 正義はこの世にないけれど

「海の底の先生って、どんなことを彼女に言ったんでしょう」




「愛はこの世にないけれど、愛することはこの世にある、とか、正義はこの世にないけれど、正義の人はこの世にいる、とか、あんまり、どうっ




てことないような気がしたけどね、言葉を聞いても。でも、マユミは真剣だったんでしょ、その先生も、本物だったんでしょ」




「詩のことは言ってませんでしたか」




「さあ」




「何か最近悩んでいることはなかったですか、彼女」




「そういえば、沈みがちだったかな。でも、私も忙しくて、気がつかなかった。自分のストレス発散が先だったから」




あんなに綺麗で優しい子はめったにいない。早くもどってきてほしい、とこの男も彼に訴えた。




マユミの高校にも行って聞き込みを行ったが、彼女はただ大人しく真面目なとびきりの美少女であった、というような情報しか分からなかった。




これという親友はいない。彼女は学校では本当に孤独だったのだ。その点は母親の言った通りだった。




学校は、やはり彼女の場所ではなかったようだ。




しかし、マリンクラブ客たちからは、彼女の真の姿を浮かびあがらせるのに必要と思われる事柄が集まってくるように思われた。






・・・・・・・






次に会ったのは、銀行員の河合正利。サオリやユカリの観察から、マユミを指名する頻度の高かった順に調査をすすめた。




「行方不明ですか」




河合は太りぎみの青年だったが、鼻筋は通っていて、目元は涼しく、眼鏡を通して鋭い視線を時々放つ、いかにもエリート銀行員だった。




23歳の新入行員。




「僕は銀行の接待幹事役でしてね、あの店には、仕事で行ってたんです。マユミは人気があったし、いつでも指名がきくようにしておかないと




だめだったから」




「銀行の接待っていうと、もっと落着いた店を使うかと思いましたが」




「ああいう店がいいんですよ。特に役人の年寄りなんか、喜びますよ。若い感じがいいんですよ。「ロック」とか「レゲ」と




か「クラブ」とか「ハウス」とかね。財務省のキャリアなんか、すごいもんですよ。特に年寄りがね、喜ぶんですよ」




「そんなもんですかね」




「何もわかっちゃいないからね。本当にいやらしいっていうのは、ああゆう店に来る、俗にいうエリートですよね。むしろ港湾労働者なんかが来




て騒いだら、よほど清潔だろうなあ」




「はあ」河合の説を拝聴する形になってしまった。




「ああ、それで、マユミでしたね」




「そうです」




・・・・・つづく

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