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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
100/116

100 In The Evening

薄暗いイエローの照明に浮かんだ店内には、突き当たりにカウンターがあり、カウンター向こうの棚には色々な種類の酒が並び、手前には5つほどの丸いテーブル席があった。




店のインテリアは頑丈で質素で古ぼけていて、ドアと同じく何度もペンキを塗り直したものだった。




壁という壁、そして天井には、レコードジャケットや車のナンバープレートやポスターが貼ってあり、すべてがアメリカ製で、すべてが20年以上の年季が入っていて、タバコの煙で黄ばんでいた。




米国兵士のスナップ写真もそれらに混じっており、軍の階級章や勲章のようなものも時々貼られていた。




カウンターには一人の男が、私に背を向けて座っていた。そのほかに誰もいなかった。




2つのテーブル席には、飲みかけのグラスや、フライドチキンが乗っていたらしいバスケットなどが、片付けられずに残っていた。




男はカウンターに寄りかかったまま、眠っているようだった。私はカウンターに歩み寄り、男をのぞき込んだ。宮本だった。




私は宮本を揺り動かして、いった。




「すみません。ビール、いただけませんか」




「・・・・」




宮本は寝ぼけ目を開けて、私を見た。「はい・・・。あ、いらっしゃい」




私はいった。




「宮本さんですね」




「ええ。そうですが」




「私の声に、聞き覚えはありませんか?」




宮本は、焦点の定まらない目で私を見た。




「あなた、どなたですか」




「やっぱりそうだ。あなたのところへは、一度、お見舞いにいったんですがね。あなた昏睡状態だったから、声は聞けなかった。初めてお声を聞きます。やっぱり、あなたか」




「・・・・」




「私のところへ電話をくださったのは、今度の公演のための練習だったんでしょうか」




「あなたは。玖村という人か」




「そうです」




「そうか・・・」




宮本は私を見たまま、黙り込んだ。




「なぜ、あんな電話をかけてきたんですか」




「河合に頼まれて」




宮本はカウンターの黒いニスが塗られた表面を見て、目を動かさずにいった。




「河合に借りがあったもので」




「あれをやれば、借金をまけてやるとでもいったんでしょうか、河合は」




「やらなければ、もっと酷いことになる、といった」




「内田も、まんまとあなたに騙された。名演技だったわけだ」




・・・・・・・つづく



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