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テレフォンライン  作者: 新庄知慧
10/116

10 聞き込みは続く

「いつも、どんなお話をしてたんですか」




「海の底の話。海底の愛の話。僕の専門の知識とか。海に関した詩とか。」




「なるほど」




「とにかく、僕は彼女の消息は何もわからない。僕も、もう一度、彼女に会いたいと思ってるんです。何か手がかりがあるなら、僕も協力しますよ。学生だし、ひまですからね」




「ありがとう」




「…そう、確かに、こわれものみたいな子です。救いを求めてるみたいな」




内田はしばしの間、不自然に沈黙した。そして、いった。




「彼女、ひどい過去の持主なんです」




「ご家庭のことですね」




「そう。探偵さんなら、ご存じですね。暗い過去から立ち直って、やっと生き返ったのに、僕もひどいこといっちゃったように思う」彼は暗い瞳をして、いった。




「どんな?」




「いえ、酔っ払いですから、客は。言いたいこと色々言いますから。海の底の詩がどうだなんて、白けた夢に過ぎないとか、そういうことを…」




内田に色々質問してみると、あの店のサオリやユカリからは聞けなかったようなことも聞き出せた。マユミのイメージが、少し明瞭になった。




マユミがこの内田に少なからぬ好意を抱いていたことは確かだ。話を終えて別れる間際に、内田は真剣な表情で、マユミをよろしくお願いします、と言った。




・・・・・・




次に会ったのは不動産屋だった。山瀬一郎。中古マンションの販売セールスマンだった。30代半ばの、髪が少し薄くなった男だった。




「僕の馬鹿な話に、いちいち相づちをうって、真剣に聞いてくれました」




暖かい思い出話に浸るようにして語る、セールスマンの言い方には、真に迫るものがあった。




「私と同年配の人に、命を救われたことがあるんだそうです」




「そうですか。海の底の先生?」




「そうです。でも、電話でしか話をしたことはなかったって。直接会って話をしたことはなかったそうですよ。




中学生になるかならないかの頃、彼女、本気で死のうと思っていたらしい。




それで、悩んだあげくに、その人と電話で話す機会があって、それで、その人の話を聞いて、励まされたそうです。生きてみようって思ったそう




です。中学受験にも立ち向かったって」




「彼女、エリス高校だったんですよ」




「え。じゃあ、中学受験って、エリスに受かったんだ。そう。やっぱり頭のいい子だったんですね」




・・・・・つづく





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