第二話
しばらくの時間が流れた。
「何…?」
思わず聞き返す。
だって、もしそれが本当なら…、
「ですから、この碑文によると俺たちが生まれるもっと昔からこの街がこうなると予測できていたというんです。」
…………馬鹿な。
ありえない。
そうしたらこの街にある、もう一つの問題はどうなるんだ?
この街のもう一つの問題。
それは、この街が黒く埋め尽くされてから毎日起きる”殺人事件”。
これの解決が僕たちの本当の任務だった。
その殺人事件だが、毎日一人、必ず殺されるという。
そして、殺されたその死体は同じような殺され方をする。
…なんとも無惨な殺され方らしいが、どうやら、腹…いや、心臓をえぐられ、殺される。
これが正しい例えだろう。
僕たちは未成年ということで実際には死体のようすを見たことはない。
…それが幸いだ。
話を戻して…、どうしてありえないのか、というと。
もし仮に、この街がこうなることが古くから予測されていた…と、いうことにする。
お気づきの方もいるかも知れませんね?
そう、ありえないの意味。
それは、予測されていた、つまりは、この殺人事件が起こるということも予測されていたことになる。
「…可笑しい。」
僕の小さな声は英輔にも届いたようだった。
英輔はこちらを見て、「気づいたか。」とも言わんばかりの顔をする。
「この碑文は本当に昔にできたものなのか?」
もしそうなら…。
額に薄っすらと汗が滲む。
この殺人計画は昔から計画されていた、そうなる。
「はい。街に古くから纏わる碑文だそうで。」
「可笑しなことになってきたな…。頭が痛い。ここを動こうか…?」
僕たちは今の今まで探偵事務所のほうから手配してくれた、仮のマンションの二階の東の一番奥の部屋にいた。
…外の空気が欲しい。
そう思い、部屋を後にする。
僕に続いて英輔が出てきた。
風邪は強い。
だが、嬉しいことに空気は透いていて美味しかった。
僕はマンションからそのまま出て外を出歩く。
やはり、結構な田舎だ。
空気が美味しいのは有り難いが…、コンクリートとは違い、砂利がすごく歩きづらい。
それに空は相変わらずの黒い天気だ。
思わずため息が出る。
「………はぁ……………。」
この街にきてからというもの、なんだか胸の内が苦しい。
僕が地面に倒れるかのように座り込むと、英輔が駆け寄ってきた。
「どうしたんですか!??」
息が切れていて、いかにも動揺している感じだ。
苦しい…。
そう言いたかったのだがいつの間にか僕は意識が遠のき、深い眠りについていた。
耳の遠くで英輔の叫ぶ声がまだしている…。
…………………………………………………。