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復讐して何が悪い!

少し考えた俺は、その金を懐に入れ闇街に向けて歩き始めた。

誘拐の依頼を出すなら闇街が1番良い。

俺の復讐は後2つだ。

本来なら自分で誘拐する予定だったが、余計な金が入ったのだ、確実なプロを雇うのが1番良いのだ。


「で?レウトーレ商会の1人息子のポールってのを誘拐してくれば良いのだな?」


俺は頷き、白金貨4枚を出す。

確かに白金貨4枚…受け取った。そう答えたのは闇ギルドの1人。

貸倉庫を借りに行かなければ。

闇ギルドの1人に貸倉庫を借りる事を言えば、闇ギルド内の貸倉庫を貸してくれるそうだ。

貸倉庫代に残りの白金貨1枚を渡す。

10日間分の料金として…。


闇ギルドの1人はポールを3日で連れてきた。


3日目の夜闇ギルドから連絡があり、言われた貸倉庫に向かうと、気絶したポールが両手足を縛られ猿轡を咬まされた状態で貸倉庫の床に転がされていた。


あぁ、やっとコイツに復讐出来る。

ここは闇ギルドの倉庫だ、どれだけ叫んでも助けは来ないし、気がつく奴など居ない。

娘を傷付けた恨みをたっぷり返してやる。


さて、まずは起こさないと時間が後7日しか無いのだ。

周りを見渡すと、拷問器具が所狭しと並べてある棚を見つけた。その横に水場がある。

水を桶に汲み、ポールの顔にぶち撒ける。

冷たさで一気に目が覚めたポールと目があった。

ポールは、呆然と俺を見上げている。

何が起きているのか、把握しきれないのかもしれないが俺には関係ない。

拷問器具の棚内から鞭を取り出す。

まずは娘の体の様に鞭傷で跡を残してあげよう。


鞭打ちを何度もしてやる。

ポールは泣きながら喚いているが、猿轡をしている為に言葉には聞こえない。

恐らく、痛い、止めろ、助けて、あたりを繰り返し言っているのだと思う。

気にせず、鞭を振るう。


段々、ポールの声が小さくなってきたので、猿轡を外してやる。

今なら痛みで喋る気力もそんなにないだろう。


「ポールよ。久しいな?俺の復讐の味は如何かな?」


「ユーリッヒさん…こんな事して……ただで済むと思うの?…俺が訴えれば…ユーリッヒさんは…捕まるよ?」


「ハハハ!捕まる?捕まるわけない。ポール、お前が娘にした仕打ちキッチリ身体で返してもらう!大丈夫だ、死んだらその辺の魔物に死体を食わせて証拠すら残さない様に処理するからな」


「ひっ!お、俺は…悪くない…誰か!…助けて」


「ハハハ!誰も来ないさ。騒げばいい、叫べばいい、助けは来ないけどな!あははは!」


まずは〜、と俺は鼻歌まじりに拷問器具内から爪剥がしを取り出した。

まだ、ポールの拷問という名の復讐は、始まったばかりである。

ポールは声にならない悲鳴を上げた。


キッチリ7日後、バラバラの肉片ポールを持った俺は闇ギルドの連中にお礼を言い死の森へ向かった。

証拠隠滅と最後の復讐だ。

死の森はアケルナー公爵の領地にある。

闇ギルドの場所から歩きで2日かかった。


ある程度森の奥に行くと、肉片をアイテムバックから取り出し、森に捨てる。

直ぐ近くの木に登りじっと肉片を見張っていると、ウルフから始まりゴブリンやコボルト、アントやマンティスやスライムなどが次々と、肉片を食い漁って行った。

2時間もしないうちに肉片は、綺麗になくなった。


さて次に向かうのは、さらに森の奥だ。

普通のヒールポーションでは直せなかった娘の鞭傷。

ハイヒールポーションでも無理だが、エクリサーならどんな酷い傷でも治せるから可能だろうと、医者に言われた。

名高い錬金術師に頼み込めば、材料を揃えてくれるならエクリサーを作ると言い契約を交わした。

材料を探したスババラウディウスという苔に出来る虹色の花、サガンムナズという綺麗な水の中にごく稀に発生する鉱石の花、ブルーズレーと言う果実。

ブルーズレーとサガンムナズはもう見つけ錬金術師に送ってある。

後はスババラウディウスだけだ。

この死の森の奥にある可能性があると情報を掴み、はやる気持ちを抑えて苔が生えていそうな場所を探す。


「あった!スババラウディウスだ」


探し始めて3日、やっとスババラウディウスを見つけた。

もう手持ちの食糧が尽きかけているし、絶え間なく魔物が襲ってくるから満身創痍だ。

急がねば!

森を抜ける為に、急足になる。


ここで錬金術師の使い魔を出せば喰われてしまうな。


俺は錬金術師から飛行型の使い魔を預かっているのだ。

スババラウディウスを見つけたら、直ぐに錬金術師に送りエクサリーを作ってもらう為だ。

エクリサーの製作料金は既に払っているので、エクリサーができ次第、娘に届けてくれる手筈になっている。


急げ!急げ!

次々くる魔物を葬り、走り続ける。


あそこなら!使い魔も行けるだろう。


前方に開けた場所を見つけた。

何かの花畑の様だ。

錬金術師から預かっている使い魔を魔物入れから出す。

予め書いてあった手紙と、スババラウディウスを包み使い魔の背中にある荷物を入れるバックに入れる。


急げ!急げ!

魔物の気配が段々近づいてくる。


使い魔を掴み思いっきり空へ投げ放つ。

使い魔は空で上手く風に乗り錬金術師の家の方角に向かい飛んでいった。


使い魔を見送ったらホッとしてしまった。

やっと、俺の役目が終わったと…。

だから、こちらに涎を流しながら近づいてくるファイアーベアに抵抗する気も起きなかった。

ファイアーベアは俺の首を狙って突進してきた。

ゆっくりとした動きに見える。

開いた口から、鋭い牙が見えた。

涎でテカる歯が俺の首を噛み付き骨を砕いた。


一瞬の出来事であった。


元、エセルティ男爵家私兵副団長、ユーリッヒは娘を傷付けた最後の復讐である、己をこの世から消し去った。





娘よ。

傷が治ったら、自由に生きてくれ。

毎日笑顔で笑っていてくれ。

親ってモノは単純だ。

子供が幸せならそれで満足なんだ。

お前の幸せを奪ったヤツは、全てこの世から消えた。

だから幸せになってくれ!

結婚なんてしなくていい、仕事だって食っていける分だけ稼げばいい。

ただ、お前の幸せだけを願っている。


神よ。娘に幸が在らんことを……。




ユーリッヒの娘のユーナと元妻のルーナは、ある日突然きた錬金術師からエクリサーを渡された。

エクリサーなんて高級ポーションに目を白黒させながら、依頼を出した覚えがない事を話す。

すると、錬金術師は依頼者は別にいる事を伝えた。

錬金術師は依頼者の名前を言わず、料金は依頼者から支払われた為、不要だと言い残してユーナ達の前を去った。

ユーナとルーナは最近ピタリと来なくなったユーリッヒが依頼者であると信じて疑わなかった。

ユーナは、エクリサーを服用し鞭傷を綺麗に消した後、父であるユーリッヒの帰りをルーナと待っていたが、とうとう姿を見せる事は無かった。


ユーナは老衰する間際、父様にありがとうがやっと言える、と言い残して亡くなった。

その顔は幸せそうに微笑んでいたと言う。

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