私、幸せですわよ?
「見苦しい。嘘や偽りにまみれていて見ていて不愉快ですわ。スキルを使わなくても、キャロル嬢が謂れのない事を責められていたのは、良くよく分かりました。カルーイ・ナルニーナ殿、リリーナ・エルセティ嬢、お二人は人前でキャロル・ガルシア嬢を侮辱し、冤罪をかけました。その責任をどうおつもりで?」
聖女様が心底呆れた顔で、カルーイ様とエルセティ男爵令嬢のお二人に問い詰めます。
「そ、それは……キャロル!私はリリーナに騙されていたんだ。私が悪いんじゃない!全て悪いのはリリーナだ!」
「な!何ですって⁈、アンタ私のせいにするき⁈」
あらあら、空いた口が塞がらないとはこの事を言うのかしらね?
謝罪を言わずに言い訳どころか、罪をエルセティ男爵令嬢1人になすりつけるとは、呆れてものも言えないですわ。
「カルーイ・ナルニーナ殿、私の婚約者を侮辱し、冤罪をかけ酷く傷付けた事、侯爵家に報告し然るべき罰を与えてもらえるようにお話ししますので、そのおつもりでいて下さい。また、リリーナ・エルセティ嬢、貴方の家にも、報告し然るべき罰を頼みますよ」
アルフの底冷えするような低い声。
相当怒っておいでですわ。
アルフ様は、公爵家の一員ですもの圧力をかけるのもお手の物でしょうね。
然るべき罰は、相当なものになりそうですわね。
「何よ!モブのくせに生意気よ!」
「モブ?何を言っているやら……衛兵!この2人を下に繋いでおけ」
数人の私兵がカルーイ様とエルセティ男爵令嬢を押さえつけながら連れて行きました。
おそらく、地下牢に連れて行かれるのでしょう。
2人はギャアギャアと最後までうるさく罵りあっていました。私兵達も呆れ顔ですわ。
「伯父様、大切な誕生日パーティーでしたのに、こんな事になってしまい申し訳ありません。皆様も、貴重なお時間をこのような事に煩わせてしまいすみませんでした」
私は、伯父様に頭を下げます。
そして、周りの皆様にも頭を下げます。
「何故、キャロルが謝るのだ。キャロルは、巻き込まれただけだろう?誕生日などまた来年もあるのだ。気にするでないぞ」
伯父様も周りの皆様も、気にする必要はないと声をかけてくれたます。
「キャロル、お前が謝るな。何も悪い事をしていないのに、謝る必要はない」
そして、婚約者であるアルフ様も。
私をギュッと抱きしめながら声をかけてくれました。
恥ずかしいですが嬉しくもあります。
「では!皆さん、劇はこれにて終了致しました!次はダンスをどうぞ!」
アルフがあたかも、劇をしていたと言わんばかりに、笑いながら終わりを告げる。
冤罪騒ぎの時から止まっていた音楽がアルフの一言で一斉に鳴り出す。
「私の、愛しい人よ。一曲踊っていただけますか?」
周りの皆がダンスを始めるなか、アルフが手を差し出してきた。
勿論、了承しましたわ。
あの後は、特に何事もなくパーティーは終わりを告げました。
無事にお開きになって本当に良かったです。
この日は、精神的に疲れ切ったおかげか、部屋に帰ってお風呂に入ってからの記憶が無いくらいの爆睡をしていまいました。
お風呂で寝てしまうなんて子供の頃でさえした事無かったですのに恥ずかしいです。
後日、カルーイ・ナルニーナ様と、リリーナ・エルセティ様の罰が決定しました。
まずは、カルーイ・ナルニーナ様。
カルーイ様は平民に落とされました。
侯爵家の力を使いやりたい放題だったみたいで、この罰が1番カルーイ様にとって辛い事と、ふんでの罰でした。身一つで放り出されたそうですから今頃どうなっているやら…ですわ。
ルーイン様はこれ幸いと、カルーイがこんな事をしたのは、両親がカルーイを甘やかして育てた所為だと糾弾し、隠居させ領地の田舎の別荘に両親を幽閉したそうだ。
後日ルーイン様は私に、カルーイ様との婚約破棄の時、両親の暴言を止められずに、すまないと謝られてきました。
ルーイン様はあの時、学園で寮生活をしていて家を留守にしていたそうだ。
もう済んだ事ですし、カルーイ様との婚約破棄のおかげでアルフ様と婚約できたのですから、気にしないで下さいとお願い致しましたわ。
次は、リリーナ・エルセティ嬢。
リリーナ様は平民に落とされた上に、戒律の厳しい修道院に行く事になりました。
最後まで、私はヒロインなのに!と反省のが見られなかった為、この罰になったそうですわ。
家からの援助なく身一つで行くそうです。
援助が無ければ何も買えないのですわ。
服も本などは勿論、細々とした生活雑貨すら買えません。
修道院で誰からの援助が無いと元貴族令嬢としては、かなり厳しい罰になると思いますわ。
エルセティ男爵家もだいぶ厳しい罰をリリーナ様に与えましたわ。
まぁ、ナルニーナ侯爵家、アケルナー公爵家、ガルシア伯爵の3家を敵に回したのだから当然と言えば当然なのかしらね?
エルセティ男爵が言うには、今まで何度も諌めたがリリーナ様は私がヒロインだから大丈夫と、訳の分からない根拠で我儘し放題だったらしい。
縁が切れて清々すると、爽やかな顔で笑っておいででしたわ。
私、怖かったです。
私の婚約破棄騒動は、こうして幕を閉じました。
殆どアルフ様が手回しして、事が終わりましたわ。
悔しいですが、まだまだアルフには敵いません。
天国にいるお父様、お母様。
報告がありますわ。
私は、本日をもってアルフ様と結婚し、ガルシア伯爵家の女当主として立派にガルシア領を盛り立てる事を誓いますわ。
お父様とお母様が愛したこの領地を、私とアルフ様も愛し大切に統治致します。
ですから見ていて下さいね?
私とアルフ様が時には笑い、時には悩み、時には喧嘩し、時には涙しながらも前に進む姿を。
今は何処かにいる、オーブ家の皆様。
報告がありますわ。
私、本日アルフ様と結婚致しました。
あの時、助けて頂きありがとうございました。
あの時、助けて頂けなければ今の私は、ここに居りませんわ。
何度もお礼は良いと申しますが、私の恩はそれだけ大きいのですわ。
これからも私の居る領地に遊びに来て下さいませ!
そして、甘味のレシピを少々教えて欲しいのです。
……決して、甘味目当てではございません。
会えるのを楽しみにしておりますわ。
キャロル・ガルシア女伯爵。
12歳の時、不幸にも両親を亡くすも、アケルナー公爵家の後ろ盾を得て、当主になれるように邁進する。
18歳の誕生日に婚約者のアルフ・アケルナーと結婚し、ガルシア女伯爵として認められた。
アルフと結婚後は、領地の統治に力を注ぐ。
アルフとの間に4人の子宝に恵まれた。
オーブ家の協力もあり、領地は温泉の観光名所として有名になる。
他にも、ウイスキーやウォッカなる新しい酒を作り出し、酒の名所として有名になった。
その功績をたたえ皇帝陛下から陞爵されガルシア女侯爵になる。
キャロル曰くこの功績はオーブ家のおかげだそう。
キャロルは、死ね瞬間までオーブ家と交流を持ち続けた。
それはそれは、旦那であるアルフがヤキモチを焼くほどだったそうだ。