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落人たち

 源平で負けた平氏は、幼い天皇・安徳天皇もろとも海の藻屑となり平氏は滅んだ。


「よし!これからは源氏が作る泰平の世がやってくるのだ。源氏に敵無し!」


「……あんたな、味方に平氏居ますやん………」


と、源頼朝が全国各地に宣言。

家臣からそんなツッコミもあったとかなかったとか。

──壇ノ浦の戦いでの大勝利。


 これが、いわゆるとこの平氏滅亡なのですが………土佐ではそう伝わっていません。

 なぜなら、安徳天皇は家臣に奪われ既に逃げたあとにあの壇ノ浦の戦いがあったと伝わっているからです。


 なので、安徳天皇の元に各地から落人が集って土佐伊予どちらも手出し出来ない土地が出来上がっていたそうで。


「源氏が気に食わないから、安徳天皇をお迎えして源氏を何とかしてもらおう」


 越前の織田や東北南部氏など安徳天皇の墓と言われる横倉山近辺に落ちて流れて落人の集合里・越知おちができたそうです。


 付近の山の斜面や、近隣の山頂には今もまだたくさんの末裔たちが住んでます。

 今訪れると、

 まさに天空都市といったジャンクな雰囲気があって別世界に来た!と感じさせてくれる風情が漂っていたり、いなかったり。すっかり過疎で人がいないっていうね。


 不便だもん、深山幽谷に住んでるのは。まず訪ねていくのが大変だから。良いところは、季節。秋になると、紅葉こうよう模様が美しくて全国各地の車をナンバーを見て確認できるくらいに観光客がやって来ましたっけね。夏場は、川を堰でせき止めて流れを緩やかにして自然のプールの出来上がり!春は…冬は……さぁ?特に行ってみたいと思わない……。深山幽谷の楽しみ方はそんなわけで人さまざま。




「壇ノ浦で死んでたんだって、やっぱりさあ」


「そうは言うけど、じゃ。…どうして平氏の落人が何の旗印も無くてここに集まって来るの?」


「それは名を騙った誰かに詐欺られて。じゃないと源氏が滅んだ時点で蜂起すればいいわけで。違う?」


「名を騙ったところで、バレた時に…そうだ。あんたなら『居ない』ってわかったときどうするの」


「源氏にこいつら平氏です!

 って、チクっただろーな。そしたら、頼朝も許してくれるんじゃないかと思う」


「そうなるよね?

 だけど、その場合あんたも切られるよ。首チョンパだよ。

 解ったとして、源氏が敵に回った平氏を許したりしない。根絶しようと落ち武者狩りしてんだから」


「平氏だって沈黙してたから安徳天皇が生きてましたってことにはならんだろ?」


「旗印がいたかどうか、そこが大事なのよ。安徳天皇が生きてました、次の天皇に──じゃ収まらないじゃない。南北朝知らないでしょ?天皇同士で骨肉の争いしてたんだからね」


「南北朝は関係ない。でもそうか、うーん……死んでたはずの継承権が上の皇族が帰ってきたところでその時点の天皇陛下が浮くよな。南北朝、なってたかもな」


「気が付いた?

源平の戦い──再びってとこね」


「しゃしゃり出て来るには、源氏が倒れるまで待つしかない。だけどその間に安徳天皇の体は保たなかったから落人は黙した?

 そんなとこか」


「妄想の産物に妄想してるだけではあるけど、そういう想像もできちゃうね」


 安徳天皇はホントに生きてたのか、そんなことは今はいいのです。


 その身を守ろうと各地から、身を落として源家に皆の注目が集まる当時、風当たりも強かったでしょうにど田舎組んだりまでやってきて、不便な深山幽谷に隠れながら再興を夢見てた第1世代を思うと、ロマンがあるでしょう?


 源氏が倒れると。

 足利が君臨し。

 足利の地勢が弱まると。

 長宗我部が我が物顔で土地を測りに来て。

 織田が倒れ、秀吉が倒れ。

 江戸になり。

 明治になり……。


 しかし、流石に貴方方は待ち過ぎた。…打つ手のないままだったのか、諦めていたのか、明治まで隠れ棲んで平氏だとようやく明かしたのは待ち過ぎ。

 もう、武家でもない時代だったのに。


 城を枕に死のう!!

 そんなのは武士の誉れです、自己満足でした。


 平氏は武家からの成り上がりでしたが皇族の並びでした、天皇を産ませているのですから。


 源平が出る前は政治の表舞台に立っていたのは蘇我一族を追いやった不比等の藤原氏でしたね、そんな藤原氏も時代の寵児であった平氏に倣っておけば間違い無いだろうと最期まで居たのです。


「平氏で無くば人にあらじ!我らも平氏であるぞ。相国公に付いたからには……源氏が我らを許すとは思えないしな」


 こういった、武家ではない藤原氏の一部が安徳天皇を奪って逃げたそうです。


 安徳天皇を守っておけば自分らは安泰だろうと。


 そう思ったのかも知れません。源氏は、厳しく山狩をしたので徐々に甘い考えだと藤原氏も気づいたのでしょうか。気付くと既に次の天皇も首が挿げ替えられています。


「よし。我らも諦めるとしようか」


 平氏に従った藤原氏も共に姓を隠して武士の時代を頭を垂れて過ごすのでした……それは明治の時代を迎えてあちこちで姓を名乗らねばいけなくなるまで続けられましたとさ。

 おしまい。


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