人と機械は歩みを進める
10日に一話を目指していましたが厳しかったです。目標は10日に一話ですが、現実は20日に一話になってしまいそうです。
ヒトガタはアダムに名を尋ねられるが、ヒトガタは自身に名などないことをつぶやくような口調で告げる。
「名前がない?今までそれで不便はなかったのですか。」ヒトガタの言葉にアダムの音声が驚くような抑揚になる。
「名前なんて必要になることはなかったよ、研究所の実験動物に呼びかけることはないし番号があれば十分だろ?」ヒトガタは冷たく、きつく言い放つ。内心では昔のことを思い出し不愉快な気持ちを晴らすために口調がきつめになったのであろう。
「そうですか、ですが名前というものはその者をその者たらしめるものという学者もいます。」
「そういわれても俺にはよくわからない、あんたが名付けてくれ。」アダムにそのような説得をされようともヒトガタには名前というものは縁遠く感じるものだった、今までの経験の中で特定の個人を呼ぶこともその必要性もなかったのだから、そう感じるのも無理はないのかもしれない。
「わかりました。あなたの身体的特徴から名前を付けます。頭の角、ホーンなんてどうでしょう。」アダムはヒトガタの体全体を見回すような動作をしながらヒトガタに名前を提示する。
「それでいいんじゃないか?」ヒトガタは特に何かを感じることもなくアダムの言う“ホーン”というを受け入れた。
「わかりましたホーン、よろしくお願いします。」アダムは“ホーン”に何度目かの挨拶をする。
ヒトガタはそれに対して「ああ、よろしく。」とそっけない返事をするだけだった。
「では、さっそく例の建物へ向かいましょう。」挨拶を済ませて間もなく建物へ向かう提案をするアダム。
「砂嵐も止んでるのか、わかった向かうとしよう。」ホーンはアダムの言葉を聞き外の様子を見る。そして外の砂嵐が止んでいるのを確認しアダムと外に出る。
「最初に疫病対策何とかっていってたよな。あんたは何をしようとしているんだ。」外へ出て建物に向かう歩みの中でホーンは尋ねる。
「私は疫病対策局支援ユニットです、簡単に説明すれば病気などの原因を突き止めそれに対応した薬や予防法の開発を手伝うのが私の役目です。」
「そうか、大変だな。」人類がこの星から消えてしばらくの時代に機械はいまだに人類を救おうとしているという話を聞き、ホーンは柄にもなくアダムという機械に機械というもののさがを哀れんだ。
「位置情報とか言っていたがどこか目的地があるのか?」しかしそれは無意味なことでもう手遅れなどとは言えるはずもなく、ホーンは感傷のような気持ちを振り払おうと質問を続ける。
「レフラー研究所というところに向かっています。そこで開発された特殊駆除剤というものがありまして。そのサンプルが残っていれば研究に有効な情報が得られるかもしれないのです。」ホーンはアダムの説明にただただ相槌を打つ。
「今度はこちらから質問をしてもよいでしょうか?」すると今度はアダムが質問をしていいかを尋ね、ホーンの返事を待つ。
「ああ、もちろん。わざわざ質問していいかなんて聞かずに、直接聞いてくれていいんだぞ。」
「では、研究所にいた旨の発言をなされていましたが、研究所から出てからどれほどの間外で活動されていましたか?」
ホーンは歩みは止ずにしばらく黙り込み考えるしぐさを見せる。しばらくたってからようやく口を開く。
「初めは人間にかくまわれて2回ぐらい冬を越した、そのあとも隠れながら1回は冬を越したな、人間をほとんど見なくなって以降は詳しい回数は覚えていないが10回以上は冬を越してるはずだ。正直数を数えたって何にもならないんだから数えるのも忘れてしまうさ。」思い出そうと試みたものの同じような繰り返しの日々を思い出すことに面倒になり、ホーンは適当な返答を返した。
「その間に他の変異体、つまりあなた方のように人間がいなくなってからも活動をしている知生体とあったことはありますか?」何を聞きたいのかと思いながらの返答ではあったがアダムの次の質問によってアダムが言うところの変異体の情報を聞きたいのだと理解した。
「人間の言葉を話せるような奴にあったことはほとんどない。そうだ、偶然にも最近そういう奴にあったよ。だけど戻ってくるのかなぁ。」
鳥型のことを思い返す。何気ない言葉によって思いがけず悩ませてしまったことを申し訳ないと思う。そして鳥型とアダムを名乗る機械、短い間に今まで長い期間合うことのなかった知性と理性を持つ者と出会ったことをホーンは考えると、不思議なことは続くものだなあと内心で考えながら語尾の抜けたような返事をする。
「どうしたのですか、その話を聞きたいですね。」
「どうしたって言われてもな、そんなに話せることもないんだよ。」しかし、ホーンは出会ってから飛び立つまでの短い内容を事細やかに、またどこか楽しそうに話していく。それをアダムは黙って聞き、二人は歩き続けていく。




