鳥型の要求
「オマエ、オレの飼い主になれ。」鳥型はヒトガタの想像を超えた提案をした。
「飼い主になれと?それまたまぜ?」提案の意図を理解できずに質問をする。
「オレはエサが欲しい、飼い主はペットにエサをやるものだ。」鳥型の返答はペットらしくしかし言葉を話すものとして考えれば何とも馬鹿らしい意見だった。
「もし断ったら?」
「知ってるか?トリがグルグルと飛んでいるところには生き物のシタイあるらしい。ワーワー鳴けばきっとイロイロ集まってくるぞ。」鳥型はヒトガタが困るような事をすると何ともいやらしい言い方で伝えヒトガタの角にとまる。
「わかったよ、飼い主になってやってもいい。だがなこっちにもメリットはあるんだよな。ペットは飼い主に益をもたらすはずだ。」ヒトガタはペットなど飼ったことはなかったがただで餌をやるのは嫌でせめて何か得るものがあればと鳥型を角からはらいながらを質問する。
「ソラからの景色はイイもの、地面を歩いていて分からないコトたくさんある。ソレを教えてやる。」
ヒトガタはしばらく考える。条件を単純に飲むか、飲むと見せかけ油断したところを仕留め食料の足しにするかを考える。
「分かった俺がお前の飼い主になってやる。俺の話をしっかり聞け、空の目が必要だと言えばお前は空へ行け、エサの時間は俺が飯を食う時だ、文句は言わせない。」
「わかった、ソレでいい。」
鳥型の要求である飼い主探しを見事成功させ、ヒトガタは流れに任せ仕方なく鳥型をペットにした。
ヒトガタは再び歩みを進め、鳥型はそれに追従する。その間に二人に会話はなかったが気まずいと感じることは恐らくなかっただろう。二人は他に会話のできる相手と長い間関わったことはなかったためにそのような感覚を感じることはなかったはずだ。
しかしそれでも会話がなかったわけではない。それなりの時間がたった時、ヒトガタが鳥型に尋ねる。「俺を見つけるまで、何をしてたんだ?」
鳥型はしばらく返事をせずにヒトガタに追従していたが、口を開く。
「オレはニンゲンに飼われてた、ニンゲンはトリが好きだった。マネするトリもたくさんいた。オレはマネをしてエサをもらってた。だけどニンゲンがいつからかいなくなった。トリたちも死んだかドコかへいった。しばらくは残ったエサ食べてた。このままでいても意味が無い。だから新しい飼い主探すことにした。」
「そういうオマエは、オレと出会うマエはなにしてた。」
「そうだな話してもいいがひとまず今日はもう歩くのをやめにしよう。休む場所を探して飯にするぞ、さあ仕事をしてみてくれ。」
「....分かった。」
鳥型はヒトガタの話を聞き空へ上がっていく。おそらくは話を先延ばしにされ不満を感じていたとは思ったが、鳥の表情をヒトガタは読み取ることはできなかったため気にすることはなかった。
鳥型は空へ上がる。旋回をしあたりを見回す、砂とビル、ぼろぼろの建物以外には何もなかったがビルの中でも比較的状態のよさそうな建物をいくつか鳥型は発見する。鳥型は一通り見終えるとヒトガタの下に戻り見つけた建物の事を説明する。ヒトガタは説明の中から適当な場所を選び移動する。
二人は建物に入りあたりを調べる。ホコリは多かったが機械の侵入の形跡もなくここが安全なのだと判断し、今日はここで休むことに決めた。
ヒトガタは火を起こすために椅子や机などを壊し集める、袋から紙くずとマッチを取り出して火をつける。紙くずの火は椅子や机の破片に燃え移り焚き火になった。
一方で鳥形は適当なところに止まりヒトガタの姿を見つめているだけだった。
ヒトガタはそんな鳥形の姿を気にもせずにランチョンミートの缶詰を開け適当なところに切り分けて置き鳥形を見る。
おかしなことにその状態から両者はしばらく動きを見せなかった。おそらく鳥形はヒトガタの行動の意図を理解せず、またヒトガタもなぜ鳥形がこちらにやって来てランチョンミートを食べようとしないのが分からなかったのだろう。両者ともそれは無理もないことだった。鳥形は飼い主に食べてよいと言葉かけをくれないと餌は食べなかったし。ヒトガタはそんな合図を知るはずもなかったのだから。
こうしてしばらくの沈黙が続いたがヒトガタは意図を察してかは分からないが、鳥形に「くっていいぞ。」とぎこちなく伝える。
鳥形はそれでようやくランチョンミートをつつき始めた。
食事を始めてもしばらく沈黙が続く。そこでヒトガタ思い出したように先程の話を始めた
「これまでの話をするんだったよな。俺は最初人間の施設に閉じ込められてた。血をとられたり電気の棒で殴られたり。だけどあるときに建物の電気が止まったことで逃げることができた。」ヒトガタは建物の外のどこか遠くを見つめながら話を続ける。
「どこからどこへ逃げたのか場所は覚えていないが逃げたさきには森に囲まれた屋敷に逃げ込んだ。そこには人間の女の子がいてその子はなぜだか自分を守ってくれた。」鳥形はランチョンミートをつつきながらもヒトガタの話を聞き「ソイツはドウなった?」と聞く。
「分からない、彼女は口が聞けなかったからどこへ言ったのかは分からないんだ、ただ他のやつらと一緒に車にのって何処かへ行ってしまった。」遠くを見ていた目を鳥形に移す。
「まぁそこからは下らないことさ、おそらくお前と同じただただ長い放浪だよ。何度も機械に襲われたり、何度も廃墟で冬を越したりな。」
「満足いったか?」ヒトガタは鳥形にたいして最後にそういった。
鳥形は相変わらずランチョンミートをつついていたが頭を動かしうなずいた。
彼らはささやかな夕食と過去を語る事を終えたあとは火を消して二人とも眠りに付いた。
見ている人がいたら、投稿ペースは非常に遅い方ですが。しばらく個人的に重要で長い用事があるため今まで以上に間が空く恐れがありますので、気長にお待ちください。