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人のいないこの星で  作者: K.タロー
二章 大穴の都市
16/19

人の見た景色、見下ろした鳥の視野

揺れが収まってからしばらくは現状を認識できなかった。決して意識が飛んだわけではないのだが想定していなかったことが起きたときには思考は固まり考えることを止めてしまうものなのだろう。



ホーンは数分かあるいはもっと短い時間の中でトークの羽ばたく音を聞き我に返る。あたりを見回せば一面茶色、土の色しかない。


わけもわからぬ様子で何気なしに上を見上げようやく現状を理解する。上には穴が開いており穴の先には天井材の禿げたみすぼらしい天井が少し遠く見えたのだ。どうやら先ほどの大揺れで床が抜けこの空洞まで落ちてしまったのだろう。


ホーンはゆっくりと立ち上がりながら体に異常がないのを確認する。打ち付けたのか少々尻が痛かったものの、怪我と呼ぶほどの痛みや傷は幸いにしてなかった。


「おーい、聞こえるか?」トークへの呼びかけ、翼をはばたかせる音が先ほど聞こえたのだからこちらの様子を気にぐらいはしているだろうと考える。


しばらくしてトークはゆっくりとはばたきながら穴の下、こちらまで降りてきた。

「大丈夫みたいだな、ダガどうする?アダムの助け、呼んでクルか?」


「ああ、そうだなロープか何か登るために必要なものを用意するようにも頼んでくれ。」空洞を手と足だけで登るのは困難なのは軽く目を通しただけで十分理解できたためホーンはすぐにそのように頼んだ。

トークはその言葉を聞くと「わかった」と返事をし、翼をはためかせ外へ向かっていった。



さてどうしたものかと考え地面に座り込みあたりを見回すと、先ほどから見えていたものが改めて目に入る。小さな穴、そして穴の先に少しかがめば進むことのできそうな空洞が続いている。


このような非常時であるのだから本来であればとどまり救助を待つべきであるが、非常時であっても好奇心がそそられるのか、あるいはこのような状況がかえってホーンの冒険心をくすぐってしまったのかどうしても先を見に行ってみたくなってしまう。


そのような小さな葛藤を胸にしながら小さい穴の周りの土に触れてみると土は崩れ穴が大きくなる。そして空洞の先に転がり積もる土の小山。


穴が幅が広がり通りやすくなった結果を見てホーンは、穴が広がったのはこの先を探索すべきという天啓の類であったと半ば言い訳のように解釈し進むこととした。


しかし先へ進んだ証拠を残さずに進んでしまえばアダムやトークには自分が訳も分からず消えてしまったように映りかねない。

それを防ぐためにホーンは穴をもう少し手で掘り広げ、自分自身と一緒に落ちてきた天井材を手のひらほどの大きさにするため力任せに割り、穴の先に進みながら一定の間隔で地面置けるとこまで置いた。天井材を等間隔で置くことで道しるべとしたのだ。


伝わるかは正直不安であるものの、トークもそこまで察しが悪くはないと信じ進んでゆく。


ホーンは屈みながら進んでいく、穴の先にあるものの想像することすらせずに。


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