人と鳥は目にする機械の目的
誤字報告してくれた方ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。何度も読んで書き直すと、混乱してしまいそうでした、というよりしましたね。
廊下を抜け扉を三人はくぐる。ホーンとトークは今までに見たことのない景色を見ることになった。
広い建物の内部には大量の楕円系の物体がずらりと寝かして並べてあった。横幅は約2メートル、高さは60センチメートルほどの物体だった。上の部分は一部透明のおそらくガラスでできていた。それ以外の部分については金属でできており地面から伸びたケーブルが何本も刺さっていた。ホーンはそれが何なのかを確かめるためにガラスの中を覗き込む。
するとその中には老人の顔があった。ホーンは驚き別の物を覗く、次のものには若い女性の顔があり、そのまた次には年端もゆかぬ少年の顔があった。その後もいくつかのものを除きこんだがそのどれにも人間の顔があった。
「これの中にはすべて人間が入っているのか。」この物体が何なのかはわからなかったがホーンはこの光景を異常なものと受け止めアダムに尋ねる。その声には明らかに同様しているようだった。
この時ホーンがどのように感じたかの子細は定かではないが、おそらく人間を埋葬するときに使う棺桶のように解釈したのだろう、だとすればこのような機械的な建物に“保管”されていることに異常さを感じたのも無理はないのかもしれない。
「はいそうです、ここは冷凍睡眠施設。この星で起きた大量死によってこの計画は行われました。」
「この計画?どういうものなんだ?」人間の死体を保管しているわけではないと何となく察することができてホーンは少し安心しながらも、わからないことを理解するために質問を重ねる。
「大量死の原因を突き止め、その解決策を編み出すまでの時間、人間を生かす必要があったのです。そのためにこの施設を含めたいくつかの施設では冷凍睡眠装置を使い人類存続のために命を保存しました。」
「ならコイツらはマダ生きてるのか?」ホーンの質問にあわせてトークも質問する。
「ええ、もちろんです。彼らは永い眠りについているのです。彼らを眠りから覚めさせるのが私の使命と言ってよいでしょう。」
アダムの言葉にホーンは気がついた、今までの会話でアダムは人間の時代に取り残された機械と思っていたがそうではないと、再び人をこの地に呼び戻すつもりであると。
この事に気がついたときホーンの脳裏にいくつかのことが浮かんだ、かつて人間に捕まりされた調査のこと、そして人間が戻ったとき自分はどうなるのか、そしてこの機械をこのままにしてよいのか。ホーンはポッドの中身をなにげなしに見回りながら考える。機械を、アダムを破壊するべきかどうかを。
人間が復活すれば自身を含んだ変異体はまたつかまり自分たちの命など気にもしない残酷な実験を再び行うのではないかと考えればアダムの破壊を脳裏によぎらせるのは当然のことだった。
しかしポッドの中身を見ながら考えるなかにその思考は更なる混乱を招くことになる。
ポッドの中身に見覚えがあったのだ。かつて人間にとらえられ激しい苦痛を伴う調査から逃げ出したとき、ホーン自身をかくまってくれた少女の姿がポッドの中にあったのだ。
少女の姿を見たときホーンは新たに思考を巡らせようとする、しかし考えがまとまることはなく、ついには「この少女の名前はなんだ」とアダムに半ば叫ぶように訪ねていた。
「申し訳ありませんポッドに保存された人間の個人情報はターミナルのデータベースから解析することはとても難しいのです。」
「この女性になにか?」少女の個人情報を答えられなかった代わりにアダムはホーンに尋ねた。
「いや、この娘には見覚えがあった。俺は彼女に命を救われたんだ。」
「人類を救うということは彼女を救うということなんだよな?」
当然の答えとして「はいそうです」とアダムは答えた。
「なら俺はお前の使命を助けるよ。」はいという返事を聞いたその瞬間、ホーンはそう言葉を返した。思考で考えることもせず、しかし確実な決意を込めてホーンはそう言葉を返した。
しばらくの間を開けて「お前はこんな飼い主にもついてきてくれるか?お前の気持ちを察することもうまくできない飼い主に。」気持ちを察してやることもうまくできず、飼い主を探すというトークの目的に水を差すような発言をして、不快な気持ちにさせてしまったと思ったことを思い出すホーン。そもそもとしてトークが自身のもとに戻ったことにも驚きを感じていた。そのためホーンは言葉を絞り出し、トークに自身の元を離れてもよいという選択肢を与えた、少なくともホーン自身はそう考えていた。
「オマエを飼い主にすることのイミ、考えたがオレよくわからなかった。でも飼い主が欲しかったならそれをあきらめるイミはない、ソウ思う。」しかしホーンの意図に反しトークはともに行くことを選んだ。
「私にはあなた方の関係を察することはできませんが、古い童話ではキツネがこのように語っています、キツネが人間と友達になるには飼い慣らされる必要があるのだと。うまく説明はできませんが、ホーンさんの言う飼い慣らすという行為とトークさんの言う飼い慣らすは根本的に考えの元が違うのではないかと。ホーンさんの飼い慣らすは主従、トークさんの言う飼い慣らすは友好の印なのではないでしょうか。」アダムは柄にもなく理論的なことではなく抽象的なことを語ったとホーンは思う。しかしホーンはその言葉にとても納得をしていた。言葉というものにとらえられ過ぎてそれ以外の直接的な関わりをないがしろにしていたのではないかと。
ホーンはトークに尋ねることはなかったが。トークが本当に欲しかったのは飼い主ではなく、相棒または友だったのではないか、トークの鳥らしい考えが飼い主という言葉を無意識に選ばせたのではないかと。
思考がまとまりホーンはトークにただ「ありがとう」と伝えた。
三者はしばらくしてこの建物を発った、人のいないこの星に人類を取り戻すために。
アダムは今までと変わらずの使命を遂げるため
トークは飼い主の決断に合わせてただ飛び立つため
そしてホーンはかつての恩人のために
一章は終わりです、しばらく物語の流れをチャージさせてください20日に一度ぐらいペースは崩れそうです。