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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか⑧

 お姉様は、ラス兄様と出会ってからまたおかしくなった。



 なんだろう、デル兄様と会うとなった時と同じ気がする。でもラス兄様と、デル兄様の共通点ってなんだろうか。二人ともとても綺麗な所? でもお姉様はなんでこんなに態度が変なんだろう。

 ラス兄様の事を元から知っていた? もしかしたら未来予知とか何か? とそんな風に思うけれど、そんな馬鹿みたな話はないと思ってしまう。




 そもそも本当に未来を予知する能力を持っていたとして、それだけならばお姉様はこんなに私を見ない事はないと思う。お姉様はどうしてあんな風になってしまったのだろうか。

 と、考え込んでしまうけれどそれよりもまずはラス兄様と仲良くなる事を務めよう。だってラス兄様は、私の家族になったんだから。



 お母様が亡くなって、家族が減った。

 けれど、家族がこうして増えた。

 その事実は嬉しいと思う。

 私は事実、嬉しかったのだ。ただ新しい家族が増えた事が。ラス兄様がこの家で安心できるように、私達の事を家族として受け入れてくれるように頑張ろうって思ったの。

 家族になれないよりも、なれたほうがずっと良い。それに私には兄妹がお姉様しかいなかったから、お兄様が増えるのは嬉しかった。




「――ラス兄様」

「ラス兄様は何が好きなの?」



 私はラス兄様に沢山話しかけていた。




 ラス兄様は、拒絶はしなかった。だけど、私の事を好ましく思って受け入れてくれているわけでもない事には気づいていた。

 ラス兄様は……お父様の養子になったという事実に、何かしらの恩義か何かを感じているみたいで、表面上は私に優しくしていた。でも……出来たら、本当の兄妹のようになりたいなって思った。



 お姉様が私の事をきちんと見なくなったからこそ、突然出来た兄は私の事を見てくれるのだろうか。新しい絆が結べたりするだろうかと、期待してしまった気持ちがなかったわけではない。

 それにラス兄様に付きまとうように話しかけていたのは、お姉様を警戒していたからというのもあった。





 お姉様は……まるでデル兄様に接していた時と同じように、私に向けるのとは違うけれど、何だかおかしな態度をしていた。まるで、ラス兄様を知っているかのような態度で、何か決めつけているような態度で――ラス兄様はお姉様の事を訝しんでいた。やっぱり、お姉様はおかしくなってる。デル兄様やラス兄様への態度がおかしくて、だからこそこうして変な態度を取られたラス兄様は警戒しているのに、お姉様はそれに気づかない。

 なんだろう、表面上のラス兄様の優しさをそのまま受け取っていたり、何だかよくわからない事で安堵していたり、よく分からなかった。





「それでね、ラス兄様がね!」

「イエルノは最近、その義理のお兄さんの話ばっかりだね……。もしかして、好きにでもなった?」

「え? いえ、そんなことはないわ。ただ、お兄様が出来るのは嬉しいのよ。ラス兄様は確かにかっこいいけど……そういうのではないわ」



 多分、ウーログは私に言って欲しいのだと思う。でも私は……好きだと口にするのは怖い。だから、好きだとは口には出来なかった。そのことがウーログには不満みたいだった。でも、それでもウーログは不満を抱えてもなんだかんだでその想いを心にしまって、私に優しくしてくれる。ウーログは、私なんかよりずっと大人だ。



 不満そうな顔を浮かべたりと、表情は豊かだけど基本的には大人びていて……そういう所に惹かれる。

 なんだろう、大人の部分と子供の部分が両方混在しているようなそんな不思議な人。話していると安心をして、沢山お話をしたくなるのはウーログだからだと思う。




「まぁ、イエルノがそういうなら安心だね。でもイエルノ、何だか少し不安そうだね。何かあったら僕に言ってね?」

「ええ……」



 ええ、と頷きながらも私は今の所、ウーログにお姉様の事を話す事は出来なかった。でも私が不安を感じているという事にウーログが気づいてくれた事が……驚いたと同時に嬉しかった。

 ウーログは、私の事をちゃんと見ている。……思い違いだったら悲しいけれど、それが何だか実感できる。だからウーログと過ごすと嬉しい。



 素直に口にしない私は可愛くないと思う。でもウーログはにこにこ笑ってる。




「イエルノ、僕はイエルノの味方だからね」

「……ええ」

「イエルノは僕の可愛い婚約者なんだから」



 可愛い、といって、ウーログは同じ年なのに私の頭を優しく撫でた。何だか子ども扱いされているみたいで不服だったけど、でも温かい気持ちになった。



 ラス兄様と仲良くなれるように頑張ろうと思った。ウーログが優しく笑ってくれたから、もっと踏み込もうって勇気が出たから。



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