何故、妹は姉をざまぁするに至ったか52
まだデル兄様は、お姉様と婚約を解消していない。
だから私はデル兄様とヒーナの事を積極的にかかわらせたりはしない。……私のお姉様をざまぁしたい我儘が二人の関係性を先に進めることがないのだと思うと、ちょっとだけ胸が痛んだ。
「イエルノ、二人は思いあってるんだね」
「ええ。驚きよね。お姉様の言う乙女げぇむの世界と同じようにこうして思いあうなんて」
ウーログの言葉に私は頷く。
正直言って、乙女げぇむと類似した世界だろうとも、同じように思いあうとは思わなかった。
「アクノール様をざまぁした後の事まで考えているんでしょ? イエルノは本当にアクノール様が大好きだね」
「それは当然よ。お姉様をざまぁしたからってお姉様の人生が終わるわけでもないもの。私はお姉様をざまぁして、お姉様がちゃんと生きていけるようにしたいんだもの。……私ね、お姉様が私を見てくれるようになったらやりたいことも沢山あるの。この十年、お姉様は私の事を全く見てこなかったから。その間に出来なかった姉妹らしいことをやりたいなって。子供っぽいかもしれないけれど……ずっとそれを私は望んでいるの」
――そう、ただお姉様と姉妹として笑いあえたら、ただお姉様が私の事を見てくれたら。
それだけしか私は考えていなくて、ただ私はその望みのためだけに此処に居る。
「お姉様は……私のざまぁで、ちゃんと私を見てくれるかしら」
ちょっとだけ心配なことはある。
――私がお姉様をざまぁしたとしても、お姉様は私を見てくれないのではないか。
そんな気持ちも当然あるのだ。
ざまぁを目標にして、ざまぁすることでお姉様が私を見てくれると思っているけれど、本当に見てくれるのだろうか。
もしお姉様がざまぁをしても現実を見てくれなかったら――。
「そんなことを考えなくていい。見させればいいんだよ。アクノール様に。乙女げぇむの世界のことだけを考えているアクノール様だからこそ、乙女げぇむが終われば乙女げぇむの世界に縋ることが出来なくなる。アクノール様は、イエルノがざまぁするという衝撃で、きっとイエルノにも目を向けるだろうね」
「……そうだといいわ」
そうだといい。
お姉様がちゃんと、私の事をちゃんと見てくれれば。乙女げぇむの世界ではなく、此処が現実だと分かってくれれば――。
私は、それだけをずっと望んでいるのだから。
「――イエルノ様、卒業式でどうするか聞いておりますわ。私はイエルノ様の味方ですからね」
ずっと仲よくしているヨドア様たち――、乙女げぇむの中で言う攻略対象の婚約者の方たちには話を通してある。私がお姉様をざまぁするということは直接的には伝えてないものの、私がお姉様に何か働きかけることは伝えてある。
デル兄様の方からも頼んであるから、ちゃんと催しは開催する事が出来るだろう。これも私だけの力では難しかったかもしれない。学園生活の中で築いてきた人との関係によって、こうして催しが出来るようになった。
――なんだろう、ずっと望んでいたことが、ようやく叶うかもしれないと思うと気を抜きそうになる。
まだまだお姉様へのざまぁが上手く行くかもわからないのに。
まだまだお姉様が私を見てくれるようになるかも一切分からないのに。
私はずっとその望みだけを求めて、前に進んできた。成し遂げたら、私はどうなるのだろうか。
社交界デビューして、ウーログと結婚して、幸せに過ごしていくだろう。そういう想像は出来るけれど、お姉様が私を見てくれるようになった後の目標も設定しておかないと。
そうしないと私も目標を叶えたからと腑抜けのようになってしまうかもしれない。でもお姉様をざまぁした後も私は学園生活を続けるわけだし、その中で卒業後の事をもっと考えたらいいのか。
「ヨドア様も、皆さまもありがとうございます。皆さまの助けがあるからこそ、私は頑張れますわ」
私は人に助けられて、こうして今進んで居られている。お姉様は……そういうのは考えていないだろう。お姉様は周りをちゃんと見ていない。――お姉様が周りを見ないからこそ、周りもお姉様をちゃんと見ない。そういう事にお姉様は気づいていないのだ。
お姉様はあくまで自分は、ちゃんと周りと交友関係を築けていると思っている。私とも仲が良い姉妹だとそんな風に思い込んでいる。
そんなことないのにー―。
私はお姉様を嫌いだと感じているのに。
「こちらこそありがとうございます。イエルノ様のおかげで私たちも楽しく過ごせておりますもの。困った時はお互い様ですわよ」
そう言ってにこやかに笑ってくれて、私はほっとした気持ちになった。
優しい雰囲気のヨドア様たちが、私は好きだなと思う。是非とも卒業後も、私と仲よくしてもらえたら嬉しいなと思う。……そして今はお姉様がヨドア様たちを見ないから交友関係は築けてないけれど、ざまぁが終わった後、お姉様と仲よくしてもらえたら嬉しいと思った。




