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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㊿

 高等部に進学した。

 中等部でも生徒会に入っていた私は、高等部でも一年目にして早速生徒会に誘われた。お姉様は私がそのことを口にしても、何も反応を見せなかった。



 お姉様の中で、生徒会に私はいない。

 だからお姉様は私の事は、いないもののような態度をする。そもそもの話、乙女げぇむの世界では私は目立っていなかった。ほぼ存在しなかったらしい。……お姉様のノート見た限り私はただ時々お姉様を慕う人物として出てきてただけみたいだし。でもお姉様が変わらずに、私にとって優しいお姉様のままだったなら、私は確かにそういう人物になったかもしれない。すべてはお姉様が私を見なくなったから。ただそれだけのことで歯車は狂ってしまったのだと思う。

 あとはウーログが転生者であったことも私の人生が変わった理由だろうけれども。




「お姉様、一緒にお茶をしません?」

「ええ」



 お姉さまは、私がお茶に誘うと、それを了承してくれる。



 それは乙女げぇむの世界のお姉様を、妹である”イエルノ・カプラッド”が慕っていたから。そしておそらく乙女げぇむの世界で”アクノール・カプラッド”と”イエルノ・カプラッド”がよくお茶会をしていたから。お茶会は、他の人を呼んでいない。私の話とお姉様の話には、解離があるから。私の言葉をお姉様は正しく受け取らない。

 思い込みの力というのは凄いのだ。




「お姉様、学園生活はどうですか?」

「いつも通りよ。イエルノはちゃんと馴染めている? 貴方は引っ込み思案だから心配だわ」




 げぇむの世界の私は、もっと大人しい性格だったのだろう。私に少しでも興味があったら私が生徒会に入っていたり、活動的に過ごしていることが分かるだろうに。

 少しずつ私は、お姉様が違和感を感じてくれないかと、お姉様に色んな事を告げている。だけれど、お姉様は自分の思い込んでいる”イエルノ・カプラッド”しか見ていないので何も言うことはない。




「お姉様は――ヒーナのことをどう思ってます?」

「ヒーナさんのこと? ……よいこだと思うわ」




 お姉様はヒーナに的外れなことを言っている。けれど、お姉様は的外れな事を言っている自覚は全くない。お姉様は悪役令嬢にならないようにヒーナに対する悪い意見を言わないようにしている。

 ……でもヒーナの事を実際に見ているわけではなく、乙女げぇむのようになっていると思っているから。だから変に暴走している時も度々ある。まるで乙女げぇむの世界のようにヒーナが攻略対象と呼ばれる人々と全員と関わっていると思っていたり、まるで乙女げぇむの世界のようにヒーナが嫌がらせを受け、馴染めていないと思っている。



 それは違うと、何度口にしてもお姉様はそれを理解などしない。理解しようとさえしていないというのが正しいのかもしれない。



 ――直接的にお姉様が迷惑をかけているのはヒーナだけであろう。他からしてみれば、おかしなことを言っているけれど実害はない存在だろうから。



 ヒーナはそういう態度をされてもお姉様の事を嫌ったりしていない。心が広いというか、優しいというか……人を心の底から嫌えない人なんじゃないかと思う。

 私なんて大好きだけど、嫌いだなんて、お姉様に感じてしまうのに、人の良い部分を信じているというか、そういう人だからこそ乙女げぇむの世界で主人公なのだろう。










 



 お姉様とのお茶会が終わって、授業を受ける。

 高等部に上がって授業は少し難しくなった。私はそこまで勉強が得意というわけではないからしっかり授業を聞く。



 ただ生徒会の仕事で忙しい時は、授業を受けずにそちらに向かうこともあるけれど。

 学園が終わった後は、クラスメイトたちに誘われて情報交換をする。貴族の子息子女たちの情報交換というのは重要なものだ。

 どんなに些細な情報だったとしても、後々重要な情報になることはある。その一つ一つの情報を聞いて、まとめて、整理する。



 学園というのは社交界の練習になるのだと改めて思っている。



 お姉様は――そういうのをしていない。ウーログが言うには、お姉様は前世の記憶に引きずられ過ぎているからだろうと言っていた。

 デル兄様とお姉様の婚約は解消される予定だから、お姉様の新たな婚約者候補などによさそうな人がいたらお父様に報告しておこうとも思っている。社交界デビューしてから新たな出会いもあるかもしれないけれど。



 どんなふうにするのがお姉様にとって一番良いのだろう。

 私はお姉様をざまぁするけど、ざまぁするのが終点ではない。ざまぁの先のことも、きちんと考えておかなければならない。



 ――きっとお姉様は、乙女げぇむの先のことなんて何も考えていないだろうけれど。

 ――そして私が、お姉様のことをざまぁすることも考えていないだろうけれど。



「イエルノ様、どうしました?」

「なんでもないわ。それより――」



 お姉様のことを考えて、心あらずな様子を見せてしまい、声をかけられはっとする。

 今は情報交換をしているのだから、お姉様のことは一旦忘れないと。




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