何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㊻
「イエルノ様、アクノール様はやっぱり私の話を聞いてくれません……」
ヒーナは結局、お姉様に関わることを選んだ。ヒーナはお姉様が周りを一切見ていないことを知って、お姉様に言葉をかける事になった。
最近のお姉様は……ヒーナに声をかけられ、おかしな様子を見せている。お姉様は……やはり乙女げぇむという世界にとらわれているのだ。周りから人が消えてもお姉様は気にすることがない。お姉様は、徐々に評判を落としている。私に対しても、お姉様の事で何か言ってくる人も増えている。――お父様たちに手をまわしているから、この評判が学園の外に広まることはない。まだ学園の中だけの話ならば、卒業後の評判までは傷つかない。まだ学園にいるうちは、子供とみなされる。
だからこそ、まだお姉様はやり直せる。寧ろ、学園生活の内にお姉様が現実を見直してくれなければ――、お姉様を外に出すことは出来なくなるかもしれない。
「……ごめんなさいね。お姉様はヒーナにも迷惑をかけているでしょう」
「いえ、私は大丈夫ですよ。確かにアクノール様は私の話を聞いてませんが、私に何かするということもありませんから」
お姉様は……あの乙女げぇむの世界だと、嫉妬からヒーナへ行動を起こして、国外追放や処刑といった事をされることになっていたらしい。お姉様は、何を思って、何をしたがっているのか私にはよく分からない。
ウーログが言うには、乙女げぇむの悪役令嬢にならないようにしようとしているとは言っていた。でもそうしようとしているにしては、お姉様は乙女げぇむの世界の事を信じ切っている。
お姉様は、乙女げぇむの世界を信じていて――、その世界のことを絶対的だと思っている。だからこそ、私の事を欠片も見ることはない。私という存在は、お姉様にとって、視界にも入らない。だけどお姉様はウーログの言っていたざまぁになることを望んでいないからか、ヒーナに嫌がらせなどをすることはないだろう。
「ヒーナにお姉様はよく分からない態度をするかもしれませんが、ヒーナに何かをするということはないでしょう。その点は安心してください」
お姉様の態度は、色んな事で逆効果だ。
――お姉様は、デル兄様たちとの仲が上手く行っているつもりなのだ。だから、デル兄様たちに普通に話しかける。デル兄様達の事を一切見ていないのに、そういう様子を見せているから引かれている事にも気づいていない。
「はい、イエルノ様」
ヒーナは、私に聞きたいことも沢山あるだろう。お姉様に関わることで気になることも沢山あるだろう。それでもヒーナは私が自分から話すまで、何か聞く事はないのだ。ヒーナは、そういうところは貴族に向いていると思う。下手に人の事を探るわけでもなく――、ただ受け入れてくれるところは、一緒に居て心地が良いものだ。
――ヒーナがお姉様に言葉をかけ、お姉様がよく分からない言葉を口にする。
その様子を見ている高等部の生徒たちは、ヒーナを心配し、お姉様から距離を置く。幾ら公爵家令嬢だとはいえ、理解が出来ない行動をする存在から距離を置くのは当然だ。
お姉様は、ヒーナの言葉をやっぱり聞かない。私もお姉様に沢山の言葉をかけているけれど、やっぱりお姉様は私の話も聞かない。お姉様は、前よりも私の話を聞かなくなった。私が脇役で、乙女げぇむの主要人物ではないから。
お父様への手紙を私はよく書いているけれど、お姉様はあまりそれも書かない。お姉様と一緒に長期休暇は帰省しているけれど、その時もお姉様は自分の世界に入り、お父様の話も聞かない。
お父様に、お姉様のことをざまぁする計画のことをしたためる。デル兄様たちと一緒にそれは進められている。デル兄様とお姉様の婚約解消の手続きも少しずつ進められている。そういえば、デル兄様はお姉様に婚約解消のことも告げたらしいのだけど……聞かなかったらしい。乙女げぇむの時間が始まって、お姉様は益々聞く耳を持たなくなってしまったから。
根回しをすこしずつ進めていって、来年の卒業式の時にお姉様をざまぁしようと進んでいるのだ。
「――アクノール様は相変わらずだね」
「うん。お姉様は相変わらず。私が何をしても何も気にしない」
ウーログの言葉に私は頷いた。お姉様は私がどれだけ不審な行動をしても私の事を気にしない。特に今年に入ってからは、私のことなんて何も目に入っていない様子だから。
「だから、私はお姉様を……ざまぁするの。お姉様が脇役だと思っている私がお姉様に何か出来るんだって、ちゃんと示すの」
もしお姉様がちゃんと周りを見てくれるならと期待していたけれど、今の所、そんな様子はないから。だから、私はざまぁする。他でもない私の手で、お姉様をざまぁするの。
そのためにどんなふうにするかはまだまだ決まっていない。ヒーナを巻き込まずに、お姉様をざまぁする計画を、もっとちゃんと進めたい。
そう思っていたのだけど、私が知らないうちにヒーナとデル兄様が仲良くなっていた。




