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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㊴

 その乙女げぇむのヒロインかもしれない少女は最近伯爵家から接触を受けているらしい。急に伯爵家から接触を受けたというのもあり、乙女げぇむの主人公――ヒーナは訝しんでいるようだ。




 平民として生きていたのならば、そういう態度になるのも当然であると言える。貴族と平民はそれだけ身分差があって、王侯貴族の中には平民を同じ人と思わないような者もいたりもする。国王陛下やお父様たちは民の事を考えて動いている。

 けれども、そうではない貴族はいる。そういう貴族は告発されることが多いが、それでも誰にも悟られないように悪事を働いている存在もいるものである。

 だからこそ、彼女が怪しむのは当然である。





「……伯爵家に引き取られてから接触したほうがいいかしら」

「そうだね。伯爵家が接触しているのならば、此処でイエルノが出て行ったら益々警戒されてしまうし。それにヒロインに接触しているフィリ伯爵家は善良な貴族だし、ちゃんと手順を踏んだ方がいいね」




 ウーログの言葉に私もそうだなと思う。フィリ伯爵家は善良な貴族である。お父様ともそれなりの親交がある貴族のはずだ。



 乙女げぇむの主人公の少女が伯爵家に引き取られたら、まずお父様を通してフィリ伯爵に接触しよう。私単独で、伯爵家当主に接触するよりもそっちの方が自然だもの。

 それにしても遠目に見ただけだけど、かわいらしい少女だった。私よりも一つ年上のはずだけど、年上には見えなかった。その髪色は白く、まるで天使のようなそんな印象を人に与える少女だった。



 あれが六人もの殿方を魅了する少女。確かにその見た目はかわいらしかった。だけど、ただかわいらしいだけでデル兄様たちを引き付けられるわけがない。私たち王侯貴族はそれだけ色んな人々と接している。王太子ではないとはいえ、王子であるデル兄様は多くの令嬢たちに懸想されている存在である。お姉様という婚約者がいようと、近づいてくる存在がいないわけでもない。



 ……というかウーログにも私が婚約者なのに近づいてくる子もいたし。世の中には婚約者が居ようとも他の異性と仲良くなる人も世の中にはいる。




 そういう周りを勘違いさせる行為はしない方がいいだろう。それを考えるとその乙女げぇむの中の主人公は、礼儀にかけた存在だと言えるだろう。現実の彼女がどんな存在かは分からないけれども、乙女げぇむの彼女に関しては、周りから非難されてもおかしくないことをしていたのだ。



 とはいえ、その乙女げぇむの世界の殿方にも問題はあったが。




 現実のデル兄様は例えば本当にお姉様と婚約を解消するにしてもきちんと手順を踏むから問題はないだろうけれども。




 これからどんな風になっていくのだろう。あの主人公がどのように動くのか――正直お姉様が思い込んでいるように乙女げぇむと同じようにはならないだろう。そもそも例えば、本当にこの世界がお姉様の知っている乙女げぇむの世界だったとしても、現実ならば少しの影響で色々と変わっていくから。

 きっと私が主人公に接触をしたらその分だけ、色々と変わっていくだろう。私がお姉様をざまぁしようとしていたとしても、その通りにはならないかもしれない。



 ……それでも、私はお姉様がここが現実だと分かってくれないなら、私はお姉様をざまぁする。

「……お姉様が、此処が現実だと分かってくれたらいいな」




 私は一人、部屋の中でつぶやいた。














 


 それからしばらくして、伯爵家に彼女は引き取られていった。その噂は貴族社会では少しだけ噂されていた。お姉様は……調べればわかることだけど、乙女げぇむの主人公である彼女が学園に転入するのは当然と思っているのか、何も動きはない。




 乙女げぇむの世界が全てであるお姉様にとってみれば主人公の過去はどうでもいいのかもしれない。お姉様にとって、乙女げぇむの世界観以外はどうでもいいのだ。お姉様が私の事を見ないように、お姉様は学園に転入する前の主人公に関心がないのだろう。



 ……ああ、もう本当にお姉様は、周りに関心がない。

 日に日に、おかしな様子を見せるお姉様。主人公が入学するからとおかしくなってきているお姉様。……その様子を心配している人たちにも、一切心を許さないお姉様。



 私はその事に何とも言えない気持ちになって仕方がない。


 さて、私はその日、フィリ伯爵家の別邸を訪れていた。お父様から話を通してもらって、主人公である少女と出会うことになっている。



「は、はじめまして」



 緊張した面立ちで、ヒーナは私を見ている。



「はじめまして。私はイエルノ・カプラッドですわ。よろしくお願いします」



 ――この目の前の少女が、どんな存在なのか知らなければならない。そして出来れば仲よくなりたい。これからのために――という打算もあるけれど、単純に緊張した面立ちで挨拶をする彼女には好感をもてたから。



 私はフィリ伯爵家の元で、彼女に貴族令嬢としての作法や礼儀を教えたり、貴族社会に入りやすいように親交を深めることになっている。私の希望によってなされたことだけど、公爵家としても、伯爵家としても旨味のある交流だ。これで親交をもっと深められればお父様も動きやすいしね。



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