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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㉞

「入学おめでとう。諸君らのこれからの学園生活に幸あらんことを」



 学園長の声を聞きながら、私は学園の入学式に参加している。



 ――そう、私はようやく学園に入学した。お姉様と同じ学園に。そしてお姉様をざまぁするための舞台にこうして、足を踏み入れたのだ。



 でもざまぁすることが学園での目標ではない。



 私は此処で充実した学園生活を過ごせるように努力をする。努力は人を裏切らない――という言葉は言い過ぎかもしれないが、私は公爵令嬢としてやれるだけのことをやるつもりだ。ーー自分の将来のためにも。

 学園生活への不安よりも期待が大きいのは、ウーログも一緒に入学式だからだろうか。ちらりとウーログの方に視線を向ければ、いつも通りの笑みをウーログが浮かべている。その笑みに安心した。安心したなんて本人に言うのは癪に障るから本人に言う気はないけど。



 それにしてもこれだけ同年代の人たちが一緒になって生活をする学園と言う場所は不思議だと思う。

 この学園には王侯貴族、そして商家のものや、優秀な平民など、沢山の人たちがいる。



「イエルノ。行こうか。僕達、同じクラスだよ」

「ええ」



 ウーログの言葉に頷いて、隣を歩く。



 私は公爵令嬢で、ウーログは侯爵子息という立場だ。この学園の中でも身分が高い方だというのもあって、視線を浴びていた。



「イエルノの制服姿、凄くいいね」

「……そう」

「うん。可愛い」



 ……本当にウーログはどうしてこうも恥ずかしがりもせずに、こんなことを言えるのだろうか。私も制服姿のウーログに似合ってるなとは思ってるけど。



「ウーログ、手」

「つないでくれるの?」

「人多いから」



 人が多いのは確かだけど、私たちをさけるように道が出来ているから手を繋ぐ必要はない。でも手を繋ぎたかったから手を差し出した。ウーログはにこにこと笑って、私の手を握った。









 私とウーログのクラスは、身分の高い生徒たちが集められているAクラスだった。あえて、此処に集まるようにしているらしい。




「まぁまぁ、婚約者とそのように手を繋いで入ってくるなんて仲睦まじいのですわね。それとも心細かったのですか?」



 教室に入った途端、金髪の縦ロールの女性に絡まれてしまった。



 この方とは会ったことはないが、誰だろうか、と思考する。実際の姿は見たことがなくても、その姿形から情報を纏めて、推測することは出来る。それにしても何で馬鹿にした風に私にそんな言葉をかけるのだろうか? 別に婚約者と仲睦まじい様子を見せていることは何の問題もないと思われるのだけど。





「貴方はケジー侯爵令嬢でしょうか?」

「ええ。ええ。わたくしはソリット・ケジーですわ。おーほほほほほ」

「そうですか。私はイエルノ・カプラッドですわ」

「え」



 何だか目の前のソリット様が固まった。もしかしたら私の事を公爵令嬢とは思わなかったのだろうか。確かに侯爵令嬢だと、このクラスで身分が高いのは公爵令嬢ぐらいだろうし、身分が下だと思って馬鹿にしようとしたのだろうか。

 しかし、正直言って人を馬鹿にして何が楽しいのか分からない。




「も、申し訳ありません」

「構いませんわ。以後、気を付けていただければ」



 慌てて謝ってきたソリット様にそう答える。それにしても侯爵令嬢でいきなりこういうことを言うということは、令嬢教育が上手く行っていないのだろうか。

 などとそんな風に考えながらソリット様を見てしまった。



 その後、ウーログもソリット様に自己紹介をして、「婚約者同士だからね。僕とイエルノは仲がいいんだよ」といいながら手を絡ませてきた。……クラスメイトの前でそれはやめてほしい。そしてこの指を絡ませる手のつなぎ方は何なのだろうかと思ったら、後から「恋人つなぎ」と言われた。

 公爵令嬢として赤面しないようにとなんとか表情が動かないように押しとどめたが、恥ずかしくて変な行動をしてしまいそうだった。




 今日は入学してすぐということで、これからの学園生活の説明などで一日を終えた。

 私はこれからお姉様に会うことになっている。入学したばかりの妹が姉に会いに行くというのは特に不自然でもないもの。お姉様には終わったら会いたいですという連絡をして了承を得ている。

 ただ、お姉様の中で私という存在は特別な存在でも何もないので、周りが言わなければ私との約束も忘れてしまうのかもしれない。実際に王家の侍女が言わないと気にも留めていないことがたまにあるみたいだし。



 そうそう、学園に入学したから私も寮に入るわけだけど、私は実家からの侍女が面倒を見てくれることになっているの。気心の知れた侍女が一緒だと安心するわ。




 ウーログと別れて女子寮にいって、部屋で少しのんびりしてから談話室の一室に向かったわ。ここでお姉様と会う予定になっていたから。

 お姉様はその場所にやってきたわ。相変わらず美しいお姉様。紅茶を飲む姿でさえも様になって、見惚れてしまいそうになる。



 それだけの美しさを持つお姉様に魅了されている殿方も多いみたい。デル兄様が婚約者だし、何か言ってくる人はいるみたいだけど。



「入学おめでとう」



 ――お姉様はそう口にして笑うけれど、やっぱり、私自身じゃなくて、お姉様の知っている”イエルノ・カプラッド”だけを見ている。



 さぁ、お姉様。私が何も出来ないとお思いのお姉様。

 同じ学園に、この舞台に私は足を踏み入れたの。

 絶対に、私のことを、ちゃんと見てもらうからね。




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