何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㉝
ヨドア様たちと仲良くなることが出来て私は嬉しかった。学園にも入学していない私の世界はまだまだ狭いから、こうして誰かと絆を結べるのは嬉しかった。それに学園のことを聞くことが出来たから、学園での目標がある程度定めることが出来た。
他のお姉様が攻略対象と書いていた人たちの婚約者たちともデル兄様のおかげで仲良くなることが叶った。それが本当に良かったとほっとする。これで少しは、お姉様の言う乙女げぇむの始まりまでに準備が少しずつ整ってきたと言えるかもしれない。
学園の話を聞いていて、私が学園でどういうスタンスでいるべきかというのがなんとなく見えてきた。ヨドア様たちと話をしてきたからこそ、見えてきたこと。
――お姉様に現実を見てもらうために、催しをするためにも私は学園内での影響力を高める必要がある。本当に心から慕われる令嬢になれるだろうかという問題もあるが……。
なるべくそういう風になれるように目指していこう。
お姉様を正気に戻すために、そのために周りを動かしやすくする。そういう打算的な面もあるけれど、純粋に仲良い人が増えたら嬉しいという思いもある。
お姉様のためにというよりも、ただ自分のためだけに私はそういうそういうことを起こそうと考えている。上手く立ち回らなければ、お姉様への催しをしにくくなるかもしれないから。
ああ、不謹慎かもしれない。性格が悪いと言われるかもしれない。だけど、お姉様への催しを思い浮かべると少しだけ高揚した気持ちになる。
――私のことを、取るに足らない存在と思っているお姉様、私が何をしても問題がないと思っているお姉様、私に興味を持たないお姉様。
そんな私が催しを成功させることが出来たのならば――、お姉様はどんな顔をするだろうか。その表情を思い浮かべると、少しだけ楽しみになる。
学園生活もとても楽しみになってくる。ヨドア様たちから沢山学園の話を聞けたからこそ、楽しみという気持ちが溢れていく。
私の世界は狭い。
屋敷の外にはそんなに出た事もない。交友関係も狭い。公爵令嬢として、領地の中を見て回ったりはしているけれど、まだまだ知らない世界は多いもの。学園に入学して、私の世界が広がったら――私はお姉様のことを気にしなくなるだろうか。お姉様がこのままでも仕方がないと思うだろうか。
今、私はお姉様のことばかり考えていて、お姉様に現実を知ってほしいとそればかりを考えている。
――けど、それがずっと続くのかは分からない。私はお姉様が好きで、お姉様が大切だから催しを行おうとしているのだ。本当にどうでもいいと思ったのならば、私は催しなどせず、現実を全く見ないお姉様のことを放置するだろうか。
ああ、分からない。
まだ学園にも入学していないのに、私はずっとそんなことばかりを考えている。
「――ねぇ、ウーログ、私ね、学園生活楽しみだわ。不安もあるけど、ヨドア様たちと話して楽しみって気持ちが大きいの。ウーログとも一緒に学生生活を送れるのが楽しみだわ」
「僕も楽しみだね。アクノール様のことは色々と考えなければならないし、このままの様子でざまぁを決行するというのならば、やることは沢山あるけれど、それでもイエルノと一緒に共同作業が出来るのも楽しみだしね。僕も学園の話を聞いて、イエルノと過ごせると嬉しいって思うよ。
きっとイエルノの制服姿は可愛いだろうし。僕、前世では恋人なんていなかったし、可愛い婚約者と一緒に過ごせると思うだけでワクワクしている」
「……また恥ずかしいことを言って」
私はウーログの声に少し恥ずかしくなって横を向いてしまう。
本当に恥ずかしい台詞を簡単に言うウーログ。ウーログのそういう言葉は恥ずかしいけど、心地よい。
ああ、もう私もウーログの制服姿が楽しみだと思っている。恥ずかしいからそんな風には言えないけど。
だけど、ウーログの手を握った。ウーログは嬉しそうに微笑んで、私の手を握り返してくれた。
学園生活。
学園に通う日はだんだん迫っている。
学園生活での目標も出来たし、行動を起こすわ。行動して、お姉様に分かってもらうように、行動し続けるわ。六年後のために。
お姉様へ行う催しの準備をするために。でも、それだけではなく、学園生活も楽しむ。知り合いを沢山作って、仲良くなるの。そしてウーログと一緒に楽しく過ごす。




