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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか②

 お姉様はお母様が亡くなって、倒れた日からかわってしまった。



 以前とは見るからに違った。私はそのことをお父様に出来たら相談したかった。だけど、お父様はお母様が亡くなったことでふさぎ込んでしまっていて、相談さえも出来なかった。

 お父様は自分の事で精一杯でお姉様の事を気にかける余裕なんてなかったのだ。私は悲しかった。



 お母様が亡くなった事も、お姉様が変わった事も、お父様が余裕がない事も。

 私は自分の心にお姉様の事を留めておくことしか出来なかった。でもお姉様は変わったとはいってもふとした瞬間はやっぱり私のお姉様だった。



 お姉様は別人になったわけではない。そう確信したのはしばらくが経ってからだった。でもなら、何故、お姉様は私にまるで違う人みたいに接するのだろうか。それが私には分からなかった。

 お姉様の近くにいた私にはお姉様が違う風になってしまったことが分かったけれど、お姉様は表面上はいつも通りにしていた。お母様が亡くなった事を悲しんで、昔と変わらない心優しいお姉様。周りはそんな風にお姉様の事を見ていて、私以外気づいてなかったかもしれない。

 でも確かにお姉様は、何だか別の何かを見るように私を見ている。そして微かだけど、面倒を見ている侍女達への態度も親しみが消えたように感じられる。そして侍女たちに対する態度と私に対する態度はどこか同じなようにも見えた。妹である私に対する態度と、侍女に対する態度。それが一緒な事は私にはショックだった。




 どうしてだろう。どうしてお姉様は私を見ていないのだろうか。私が一生懸命話しかけても、私じゃなくて別の何かを見ているような――私はお母様が亡くなったことも含めて、お姉様がそのような態度になった事がとても悲しかった。



 二歳上のお姉様。私の大好きなお姉様。私の事をとても可愛がってくれていて、優しいお姉様。私はお姉様の事がとても好きで、お姉様のようになりたいとずっと願っていた。私の自慢のお姉様。




 それが、どうしてこんな……私をそんな目で見るのだろうか。




 私は悶々と一人でそのことを悩んでいた。誰にもこんなことは相談できなくて。だけど、確かにお姉様はお姉様で、変わっても私のお姉様で。なのにどうしてこんな態度を取るのだろうか。分からなくて、だからこそ私はお姉様をよく観察する事にした。



 他に出来る事が分からなかった。お姉様が変わってしまった原因が分かったら、お姉様が前のように戻るための何かを見つける事が出来るのではないかとそんな風に思ったから。

 お姉様はお母様が亡くなった事を悲しんでいる令嬢を演じていた。……いや、悲しんでいるのは事実だろう。でもどこか大げさにしているのがなんとなくわかる。本当にどうしてしまったんだろうか。




 侍女たちに優しくしている。それは以前と変わらないけれど、どこかその優しさが薄っぺらい。前はもっと侍女たちの事を思って、一人一人を大切にしていたように思えるけれど……今はどこか、一人一人の侍女を認識してなくて、”大勢の侍女”という括りにしてしまっているような……そんな気がする。




 以前は光物の宝石などが好きだったお姉様だけど、最近は以前よりそういうものを買わないようになっている気がする。お父様はお母様が亡くなって悲しんでいるからと認識しているみたいだけど、なんかそれとは理由が違う気がする。



 お父様に対しても何だか様子が変だ。前のように純粋にお父様を慕っているという雰囲気ではなく、お父様の前でどこか無理をしているというか、緊張しているような節があった。お姉様はどうしたのだろうか。お父様は私達姉妹の事を本当に大切にしてくれているのに。今は、お母様が亡くなって落ち込んで、私たちの事を気にかけられないお父様だけど、私にとって大好きで自慢のお父様なのに。




「お姉様、お姉様!」




 私は一生懸命お姉様に話しかけるけれど、やっぱり、何だか私を見る目が以前と違う。

 何かを思い悩んでいるようで、何かを必死に考えているお姉様。……どうしたの。お姉様。教えてくれたら私もお姉様が難しい顔をしている原因について一緒に考えられるのに。





「お姉様、大丈夫?」




 と、問いかけたらなぜかお姉様はしまったって顔をした。私の前でそういう姿を見せないように無理しだした。お姉様が弱音を吐いてくれない事も悲しかった。私にそういう表情の変化を見られたくないといった態度なのも悲しかった。




 まるで家族じゃなくて、他人みたい。

 お母様が亡くなって、家族が一人減って。

 お姉様もおかしくなって、もう一人家族が減った気分になる。




 お姉様は私に話したくないみたいだから、お姉様が様子がおかしいのをお姉様に問いかける事が出来なかった。

 悲しいなぁって思って、一人で自室で泣いた。



 それからしばらくして、お姉様の婚約者であるこの国の第二王子であるデルデ・フソン様―—デル兄様がこちらにやってくるというのを聞いてお姉様は益々挙動不審になった。




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