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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㉗

 ウーログにお姉様が帰ってくるまでゆっくりしたらと言われた。



 お姉様が学園に入学してもうすでにふた月ほど経過している。ずっとお姉様は傍にいるのが当たり前だった。同じ屋敷内にいて、顔を見ないことなんてなかった。お姉様がいないことは不思議で、だけど……、私を見ていないことを実感しなくて済むことはほっとした。



 お姉様のことを私がなんとも思っていなければこういう気持ちになることなく、放っておけるのだけれど。私はお姉様のことが大好きだから、だからこそ、お姉様にちゃんと私自身を見てほしいと思っている。



 学園に入学してからというものの、一度もお姉様から手紙は届いていないらしい。デル兄様からの返信はあった。お姉様の様子を書いてくれていた。そして申し訳ないけれどもお姉様との結婚はこのままでは難しいかもしれないとも書かれていた。



 やはり、お姉様からデル兄様の心は離れている。



 私もデル兄様も王侯貴族だからこそ、愛のない結婚もあることは知っている。とはいえ、お父様も陛下もお姉様とデル兄様の婚約は心が離れてまで続けようとは思っていないのだ。王太子殿下とその婚約者であるのならば、婚約者を変えることはまず出来ない。何故なら王妃となるべく存在として育てられた婚約者には変えが居ないからだ。でもデル兄様は第二王子だし、王太子の婚約者よりは融通が利く。



 何より政略結婚とはいっても、なんらかの利害の一致などがあったり様々な形があるのだ。お姉様のように誰のこともちゃんと見ていないようでは、政略結婚だったとしても良い形には治まらないだろう。

 そもそも利害関係の一致の政略結婚だったとしても、現実を見ていないわけではない。お姉様のように現実を現実としてみていないのは、とても危ういことだ。ここは確かに現実なのに、お姉様にとってはげぇむの登場人物以外はその他大勢でしかないのだ。例えば、げぇむに出てこない存在が死んだとしてもお姉様は悲しまないだろう。




 ……お姉様が学園で、沢山の人とふれあって、此処が現実だと理解してくれればいいのに。そしたらざまぁをしなければならないなんて計画をしなくても問題がないのに。



 私がお姉様と同じ年ではないのがもどかしい。同じ年だったら学園でのお姉様のことを見ることが出来て、お姉様にもっと働きかけることが出来るのに。




 そんなことを考えて、此処にはいないお姉様のことをそんな風に悩んでも仕方がないと首を振った。




 私はラス兄様の元へ向かった。




 ラス兄様ものびのびと過ごしているようだった。ラス兄様はげぇむでの攻略対象という位置づけだからこそ、お姉様はラス兄様への態度がおかしかった。それは見る人にとってはおかしいと十分思えるような態度だったのだ。本人のことを見てない態度にラス兄様は戸惑っていた。だからお姉様がいなくてほっとしているようだ。

 いつか、お姉様がきちんと本人のことを見てくれて――、そして本当の意味でラス兄様と仲良くなってくれたらと思う。





「ラス兄様、こんにちは」

「イエルノか」

「ラス兄様は、今何をしてらっしゃったの? もしお時間があるようなら一緒にお茶をしませんか?」




 ラス兄様とは時間がある時に、お茶をしたりして、仲良く出来るように努めている。人と人との関係性は結局のところ、思いやりをもった行動が出来るかどうかも重要だと思っている。貴族間では利害関係は重要だけれども、その中でもその人のことを見ることで、本当の意味で仲良くなれるのだと思う。

 もちろん、私たちは貴族であるから、貴族としての責任を果たしていない相手にはそれ相応の対応を取らなければならないこともあるけれど。



 貴族に生まれたからには、私たちには義務がある。領民たちの税によって生かされている私たちは、貴族として行動を考えて行わなければならない。


 それはお父様に言われていることだ。



 義務の分は、働かなければならない。

 貴族の中には義務を放棄したり、勘違いして圧政を開いたりする貴族もいるらしいが、そういう貴族は領民の反乱にあったり、国からの審査が入ったりして落ちぶれていくだろう。




 義務と責任を私たちは果たさなければならない。

 だからこそ、私もラス兄様も勉強を必死にやっている。お姉様も学んではいるけれど、領民たちに対してさして興味はないようだった。その他大勢の領民はどうでもいいといった考え方は、正直言って露見すれば危うい考え方だ。





「お茶か。いいよ」

「ありがとうございますわ。では、準備を整えさせますね」




 それからラス兄様とお喋りをしながらお茶を飲んだ。こういう身内間でのやり取りや会話も社交界の練習になる。もちろん、本番とはくらべものにならないかもしれないが、いずれ恥をかく事がないように当たり前の日常の中に貴族として生きていく術を身に着けられるようになっているのだ。




 ――私とラス兄様は和やかに会話を交わした。お姉様の話題はどちらも口にしなかった。


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