表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/60

何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㉕

「イエルノ、話とは?」

「……お姉様の、事です」




 私はお姉様がこのまま現実を直視してくださらないのならば、ウーログの言うざまぁをしようと思っている。




 げぇむという物語の終わりを迎えさせる。他の誰かの手ではなく、私の手で。お姉様に終わりを告げるのは、他の人だと嫌だと思う。……だって、お姉様がげぇむという物語に捕らわれている事を知ったのは私だから。――私は、誰よりもお姉様に現実を見てほしいと思っているから。





「アクノールの事か……」

「はい。お父様、お姉様が様子がおかしいのは気づいておられますよね?」

「それは……そうだが」

「お姉様の私に対する態度も報告は受けているでしょう?」



 私はそう言って、お父様を見る。




 お父様は、私達の事を大切には思っている。ただ、お母様がいなくなってから娘である私達とどう接して言ったらいいか悩んでいたりするのを知っている。とはいえ、お母様がいなくなった寂しさを紛らわせるために仕事に熱中して、私達と向き合っていないのも事実だと思う。お父様は、娘達に対してどんな風に動けばいいか分かっていない。


 公爵としては有能だけど、父親としてはうまくできていないのだと思う。多分、私がこうしてお父様に話を持っていかなければ、お父様はあまり動かなかったと思う。お姉様は表面上、問題はないから。

 ――でも、私は表面上問題がなくても、このままなんて嫌だから。






「……ああ。様子がおかしいのは知っている。私に対しても接し方が以前と変わった。それも、母親が亡くなった影響だろう」

「お父様、私は――お姉様が私を見てない事が嫌です。お姉様がまるで私が此処にいないみたいに、”イエルノ・カプラッド”という別の何かを見ている事が嫌です。お姉様は、私だけじゃなくて他の人にもそうです。表面上は問題がなくても……、問題は大ありだと思います。近ければ、近いほど、お姉様が……ちゃんとこちらを見ていない事が分かるんです。お父様の事も、お姉様はちゃんと”お父様”としてみていない」



 忙しいお父様。

 お母様が亡くなって、一心に公爵として動いているお父様。

 領民からは理想の領主と呼ばれているような立派なお父様。

 お母様を心から愛して、大切にしていたからこそ再婚もせずにお母様を今も思っているお父様。

 そんなお父様が私は好きだ。





 貴族だからこそ、親子の距離は庶民より近くはない。お父様は忙しいから、話をするのも少しだけ久しぶりだ。でも、それでも家族だから。お父様はちゃんと私の言葉を聞いてくれるはず。





「デル兄様のことだってそうです。お姉様は、デル兄様の事もちゃんと見てません。表面上は優しくて、仲よくしていても、そこに心がなければ意味がありません。王侯貴族は政略結婚が多いですけど、政略結婚だったとしても愛はなくても情はあるといった状況にでも幾らでも持っていけます。お姉様は、あらゆる人に対して今、ちゃんと見てません。正しく言えば、無だと思います。――私は、お姉様にちゃんと私を見てほしい。ちゃんと、周りを見てほしい。だから……、そのための催しをしたいんです」

「……催し?」

「はい。お姉様がもし、お姉様の学園卒業までにこのままちゃんと見てくれないなら――、お姉様がこちらを見るようにことを起こしたいんです。こんな事、公爵令嬢の私が勝手にやってはいけないと思うので許可が欲しいのです。迷惑はかけないようにちゃんと手回しはします。それに卒業までに手を尽くして、お姉様が、私の事を”イエルノ・カプラッド”という記号ではなく、ちゃんと見てくれるように動きます。

 本当にお姉様が、変わらなかった場合だけことを起こしたいんです。まだ、六年もあるけど、そのために私は準備をしたいんです。勝手な事を言っているのは分かってますけど、でも――私はお姉様に見てほしいんです。お父様、お願いします」



 表面上は、お姉様は何の問題もない。ただ周りを見ていなくて、現実を見ていないけど、アクノール・カプラッドう立派な公爵令嬢としてそこにいる。




 だから、これは私の我儘だ。


 ――私は、ただ自分を見てほしいっていう我儘から多くのものを巻き込もうとしている。




 私って、自分勝手だなと思うけど、それでも私はお姉様の視界にちゃんとうつりたい。





「頭をあげてくれ、イエルノ。君が、そこまで苦しんでいたと気づかなくてすまない。父親であるのに……。私は、アクノールが少し様子がおかしくても、どう接していいか分からなかった。どう動いたらいいか分からなかった。……私も、アクノールとちゃんと話してみようと思う。それでもアクノールの学園卒業の時にまだそうであるのならば何かきっかけを与えるのはいい事ではないかと思う」

「……お父様っ、ありがとうございます」




 お父様がちゃんとお姉様と話してみると言ってくれて嬉しかった。私が乙女げぇむを口にした時にあんなふうに豹変したお姉様が、お父様と話してどんな風になるかわからないけど、ちゃんと現実を見てくれたらいいなと思う。



「お父様、それで……もしやるとしてもずっと先ですが、準備はしておきたいんです。デル兄様に連絡を取るのを許していただけますか?」




 そして私は次の交渉を口にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ