何故、妹は姉をざまぁするに至ったか㉓
「そう……アクノール様はそんなことを」
「……ええ」
お姉様にげぇむの事を告げて、お姉様がそのことをなかったことにした事。それをウーログに伝えた。こういう相談はウーログ以外には出来ない。
それにしてもげぇむの事を口にした瞬間、お姉様は確かに私を見た。”イエルノ・カプラッド”というげぇむの登場人物の妹という認識ではなく、確かに私を見ていた。だからこそ私はお姉様がちゃんとここがげぇむではないと理解してくれるのではないかと期待した。だけど、お姉様は……私の事をたたいた。そしてなかったこととして処理してしまった。
「お姉様は、またげぇむの事を口にしたらこうなりそうだわ。少しずつ理解してもらおうと動くつもりではあるけれど」
「……イエルノの話を聞いている限り、アクノール様は本当にこの世界を乙女ゲームの世界だと信じ切っているんだね。それこそ妹であるイエルノの言葉を一切聞かないぐらい。イエルノ、無理をしないで。僕はイエルノが叩かれたりするのは嫌なんだ。イエルノが望むからアクノール様の事を協力をしているけど、僕はアクノール様よりもイエルノの方が大切だから」
私がお姉様に叩かれてしまった事を知って、悲しそうな顔を浮かべている。
お姉様よりも私の方が大切だというウーログは、私に言うのだ。
「僕は……イエルノが傷つくぐらいなら、アクノール様が破滅しようが構わない。アクノール様の事はもう放っておいたらって正直そんな風に思うよ」
お姉様が破滅しようが構わないと、もう放っておいたらどうかと。
その言葉に私が反論の声をあげる前に、ウーログは言う。
「でも、イエルノはアクノール様の事を放っておけないんでしょ? イエルノは優しいからね。……だから止められないよ。でも、イエルノ。僕はイエルノが僕の知らない所で傷ついているのが嫌なんだ。だから――、せめて無茶をするのならば僕と一緒にいる時に無茶をして。僕はイエルノに何かあるのは嫌なんだよ」
ウーログは、私の欲しい言葉をいつもくれる。
ウーログは、前世の記憶があるからか分からないけれども、とても冷静で、優しい。……私がお姉様を諦めてしまえば、それだけで楽になれる。お姉様の事を放っておけば、多分、勝手に悪い方向に転がっていくと思う。だってお姉様は婚約者であるデル兄様の事も全く見ていないから。デル兄様の心は離れていっている。それは確かだと思う。例え、結婚したとしてもこのままではお姉様もデル兄様も幸せになんてなれないと思う。
「ウーログ……ごめんなさい。お姉様の事を諦められたら、ウーログを巻き込むこともしなくてよかったのに」
「イエルノ、悲しそうな顔をしないで。大丈夫だよ。僕はイエルノに巻き込まれるのならば、どんどん巻き込まれたい。好きな子の問題なら、自分の問題と一緒なんだから」
「ウーログ……」
私の問題を自分の問題と言ってくれる事が嬉しいと思った。好意を抱いている相手だからこそ、巻き込みたくないという思いはある。だけれども、やっぱり嬉しいという気持ちは嘘なんかではない。それだけウーログの中で私の存在が大きくなっているという事だから。……こんな事を考えていると知ったら引かれてしまうだろうか。
「とりあえず言っても理解しない事は分かったわけだけど、どうしようか。もうすぐアクノール様も学園に通ってしまうわけだけど」
「……一番は、そのげぇむの物語が始まる前にお姉様にげぇむの世界と現実が違う事を分かってもらう事だけど、厳しいかもしれない」
私が望んでいるのは、お姉様がげぇむの物語が始まる前にちゃんと理解してくれる事だ。でも、それは難しいかもしれない。だってお姉様に私の声は届かない。私が何を言っても、またなかったことにするのではないかと、そんな風に思ってしまう。
「もし、駄目だった場合はどうしたい? もしかしたらアクノール様は、乙女ゲームがはじまったとしても変わらないかもしれないよ」
「……ええ。あの、その乙女げぇむってもの、エンディングって主人公が誰かを選んでハッピーエンドになって、お姉様が断罪されるのよね」
「うん。そうみたいだね」
「……なら、本当にお姉様が分かってくれないなら、お姉様が私達をちゃんと見てくれないなら、一度、エンディングをちゃんと迎えてみるのはどうかと思うの。どんな風に迎えるかなんて考えてないけど、お姉様が、断罪される未来というか、一区切りするのは仕方がないのかもしれないって、この前のお姉様を見て思ったの」
だって幾ら私が動いたとしてもお姉様は現実を見ないかもしれない。その可能性が強いと思う。だからこそ、もし、お姉様は本当にそんな風に分からないままで生きるというのならば、一度終わらせるべきかと思った。
げぇむの世界だと信じているお姉様がげぇむの世界を終えたらどうなるかは分からない。だけど、そこで、ちゃんと私達が一人一人生きている人間だってわかってくれたらと思うから。
「そうだね……最悪、そうしないといけないかも」
「ええ。その時は、助けてもらえる?」
「もちろん」
――出来れば、そこまで行く前にどうにかしたい。だけれども、そこまで行くかもしれない。その時は、私はお姉様を、この手で断罪したい。そんな思いさえ、私には湧いてきていた。




