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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか⑱

 ウーログが転生者であることを知った。この世界がお姉様にとって乙女げぇむというものの世界だという事を知った。そしてウーログと一緒に作戦会議をした。




 ――まさか、あのお姉様の書いていた解読できない文字が異世界の文字なんて思ってもいなかった。でも、ウーログに相談が出来て良かった。ウーログに言ってみて良かった。言ってみる事さえもしなかったら、私はお姉様が何故、ああなってしまったのか理解さえも出来なかっただろう。



「こんな感じでいいかしら――」



 そして私は今、お姉様がこの世界を現実だと分かってもらうための第一歩として書置きをお姉様の机に残す事にした。



『ここは現実です。その意味をよく考えてください』



 それだけの文字をつづったメモ。正直私にはどんな風に書置きを残すのが一番なのかぴんと来ない。



 私がお姉様の立場だったらと考えてみた時、私は冷静に周りを見れるかどうか分からない。もしかしたら自分が婚約破棄されたり、国外追放されるかもしれない未来がやってくるかもしれないと知ってしまったら――流石に冷静ではいられないだろう。ウーログが好きだという気持ちがあるからこそ、ウーログに捨てられてしまったらと考えるだけで胸が痛いから。




 こんな一文でお姉様が何か思ってくれるか、何か考えてくれるか、それは分からない。でも、私はお姉様が思い込んでいるのは仕方がないってそのままにはしたくない。それでいてお姉様に傷がつかないように行動をしたいなんて私は我儘なのかもしれない。でも、我儘だったとしても私はお姉様に私を見てほしい。




 そのつづったメモは、敢えて私が書いたと分かるように違う書き方はしなかった。お姉様が私の事をちゃんと見ていてくれたならば、メモを見れば私が書いたという事が分かるだろう。それかお姉様が私の事を信頼してくれているのならば、その謎のメモについて私に相談してくれるだろう。そんな期待を込めた。お姉様に私の事を分かってほしい。その気持ちが強いからこそ、私は実行した。




 お姉様の部屋にメモを裏返して置いておいた。

 お姉様はあのメモを見たらどんな行動を起こすだろうか。その事にドキドキしながら私はその日を過ごした。




 私は直接は見ていないけれど、私が置いたメモを見てお姉様はとても蒼白な顔になってしまっていたようだ。此処がげぇむの世界ではない事、ちゃんと理解してくれたらいいのだけど。

 お姉様は、そのメモを見て取り乱してはいたようだ。だけど、私にあった時には何も言わなかった。ただ笑っているだけ。私、という存在を敢えて見ていない瞳。お姉様が私の事を見てくれたらどれだけいいだろうか。やっぱり、お姉様は私が書いた文字だと気づいていないようだった。




「お姉様、どうかしましたか?」

「何でもないわ」



 私が問いかけてもお姉様はメモの事を私に相談する事なんてなかった。




 お姉様はノートに相変わらず一心に何かを書いていた。ぶつぶつと口にしている言葉は分からない言葉だった。もしかしたら前世の言葉だったりするんだろうか。その言葉が分からない事がもどかしい。日本語という文字をもっと理解する事が出来たらお姉様をもとに戻すための第一歩がもっと踏み出せるだろうか。



 お姉様は相変わらず私を見る事がない。

 私の事を見ているようで見ていなくて、その事に胸が痛んでならない。



 ――ねぇ、お姉様。私の事をちゃんと見て。私がどういう人間かちゃんと見て。私の話をちゃんと聞いて。そんな、見ているようで見てない目はやめて。





 そんな思いがどんどんわいてくる。私はただお姉様に見てほしいのに、お姉様は私を見ないのだ。





 私の文字に気づきもしないで、私が何を考えているかも考えてくれなくて。――私が、笑顔を張り付けている事にもお姉様は気づいてくれない。

 勇気を出してメモを残した。




 少しでもお姉様が何か感じてくれたらって。少しでもここが現実だともっと分かってくれたらってそんな期待を込めて。でもお姉様は益々、私への態度を悪化させた。

 デル兄様やラス兄様への態度もそう。何だか、益々、見ているようで見ていない態度をしているようだ。悪化させてしまったかもしれない……。




 もっと、ちゃんとげぇむという言葉をお姉様に告げるべきだろうか。でもその言葉を告げてお姉様が正気でいられるだろうか。お姉様が公爵令嬢としてあり得ないような態度をしてしまったら……、それこそこの先取り返しのつかない悪評になってしまう。




 お姉様のこれからのためにも、お姉様が変な行動を起こさないようにはしないといけない。……メモ書きでも何も感じてくれないなら、どう行動するのが一番だろうか。

 私の幼い頭では、どう動くべきなのか、いまいちぴんとこなかった。


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