決意とそのあと
そんなこんなでガタンゴトンと電車に揺られながら大和とのとの戦いを思い出していた。
ボロボロになった服が、
頭に残った絶望感が、
今でもはっきりと思い出せる痛みがあの戦いが現実に起こったことだと僕に認識させた。
次に大和と会えば即、殺されてしまうだろう。
あの大和は本気ではなかった。
実際に戦った(ボコられた)2体に加えて残り5体も配下がいる。
絶望的なまでの戦力差だ。
そう思っていると車内アナウンスが聞こえてきた。
「次は~....に停車いたします。」
降りる駅だ。
ここで降りてしまっていいのだろうか?
もし家に帰ったところを見つかったら......
家に危害が及ぶかもしれない。
「なんだ。もう帰れる場所はないんだ。」
あぁ~あ、辛いことばっかの人生だったなぁ。
諦めにも似た感情が心の中に湧いた。
友達だと思っていたのに避けられた。彼女だと思っていたのに裏切られた。帰ってくると言ったのに嘘をつかれた。
泣いたこともあった、人との関わりも避けるようになった。
勝ち目のない戦いに挑んで殺されるよりは、いっそ自分から楽に... なんてね。
楽しかった思い出ほど忘れ、嫌な思い出ほど記憶に残る。だっけ?
嫌な思い出ばっかり思い出すけど、たしかに楽しいことはあったんだ。
一緒にゲームをしてた。楽しかった。
二人でデートした。ドキドキした。
三人でドライブした。幸せだった。
終わりが来るまでは楽しかったんだ。
なら、それを先延ばしにする為に
大和を越えよう。
終わりが来ない限り、僕は強くなるんだ。
そして僕は最寄り駅で降りることをやめた。
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とりあえず家には帰れないから寝床を確保しないといけない。
まぁ、ネットカフェが妥当なところかな?
転々としていればすぐには居場所がばれることはない、と思いたい。
人ごみに紛れるっていう意味でなるべく都会のほうが良い。
とりあえず渋谷とか新宿とかそこらへんに行こう。
渋谷に到着してハチ公口から出ると人々がお祭りのように賑わっているようだった。
さすがの渋谷といったところか。
まぁ、まだ時間はあるしどうしようか...。
能力について何かわかれば良いんだけど。
あ、そういばベルゼブブが「なんでも言ってくれ!」とか言ってたから聞いてみようかな。って、連絡先知らないから聞けないじゃん。
「僕に用かい?」
僕がガックリしていると耳元からダンディなオッサンの声が聞こえてきた。
「うわっ!」
僕が驚いて声を上げると、ダンディな声の主が口を緩め笑っていた。
「アッハハハ。いきなり出できて驚いた?僕だよ。」
声の主は、先ほど連絡をしたいと思っていたベルゼブブだった。
「イタズラを覚えた子供かよ。」
「いや~、いきなり出てきたらビックリするかなって思ってたんだけど。案の定ビックリしてね~。もう笑うしかないよね。」
このオッサン無茶苦茶腹立つな。
「ごめんごめん!今回は君の聞きたいことになるべく答えるからさ!」
「お、本当!なら僕の能力に関してなんだけど!」
と、僕がそういうとベルゼブブは僕に向けてちょっと待てというように右手を僕の前に出した。
「ここじゃあ何だし、とりあえず落ち着けるとこに行こうか。」
落ち着いて話すため、カフェに行くことにした。