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第92話 尾張の悪役令嬢様との思い出(75)
まあ、とにかくさ、情けない、当主……。城もあるのか? ないのか? まあ、わからないようなガキの殿に、人質生活時代もついてきてくれた。苦楽を共にしてくれた。
俺の吉姉さまへの恋心も知っている家臣の平岩親吉と鳥居元忠達がね、「シクシク」と泣いている情けない殿さまの俺へと《《あの時》》に優しく声をかけ、手を差し伸べてくれたよ。
「若、元気を出して行きましょう。若は将来名将になるのだから」
「そうですよ、若! 親吉の言う通りですよ! 若が生きてさえいれば、また織田の姫様とも逢えますよ。だから今回はもう泣かずに男気を出して、この場をカッコよく去りましょう……」とも。
俺の家臣にしとくのは勿体ないぐらいの兄貴分の二人がさ、情けない俺へと更に優しく声をかけてくれた。




