第71話 駿府の恋乱戦! 竹千代“陣羽織騒動”勃発!(1)
◆氏真姫、《《竹千代の初陣の陣羽織問題》》にまで口を出し始める
初陣演習の翌朝──
俺は半蔵に連行され、雪斎和尚さまが用意をしてくれた戦術演習場へ向かっていた。
「若君。今日は《《初陣の装備確認》》です」
「いや、先ほどまで、俺は自主訓練していたから、もう少し休ませてよ……」
「いいえ、だめです……。休ませません……」
「半蔵ちゃん、厳しい……」
俺が苦笑いを浮かべた時──
演習場の前で氏真姫が腕を組んで待っていた。
「……半蔵」
「はい、姫さま」
「人質殿の初陣の《《陣羽織》》ですが──他の令嬢が《《選びたい》》と言って乱入する可能性がありますわ」
俺がまた氏真姫がいたのか……。
こいつ、マジで俺のストーカーだな、と思えば。
まあ、いつも通りに元景、氏長、岡部、直虎……。
そして半蔵たち令嬢軍団が廊下でざわつく。
「選ばないよ!?」
「選びますね」
「選びますっ!」
「選ぶよ!」
「選びます」
「選ぶの!?」
「選びます」
だから俺がツッコミを入れてやると、泰朝が反応をしてくれるから。
俺はいつもの通りに、泰朝も俺のストーカーだよな! と思えば。
氏真姫は真っ赤になって叫んだ。
「ですので~! 竹千代の陣羽織は、わらわが選びます!」
俺を独占したくて仕方がない、駿府の悪役令嬢さまに、今日も俺は、
「選ばなくていいよ!?」
とツッコミを入れた。
◆雪斎和尚、本気の戦術演習を開始
俺たち演習場に入ると、雪斎和尚が軍旗を掲げていた。
「今日も《《初陣を想定した戦術演習》》を行うぞい! 竹千代殿、そなたが総大将じゃ!」
「総大将!? また僕!?」
「未来のためじゃ」
太原雪斎和尚さまに俺が尋ね、終われば、氏真姫は俺のの横にぴたりと立つ。
「人質殿の初陣を見守りますわ」
俺が氏真近い! 近い! と思いながら。
「見守らなくていいよ!?」
苦笑いを浮かべる。
《ドンッ!》
また演習場の扉が勢いよく開いた。
「竹千代さまーっ! 忠次、参りました!」
酒井の姉ちゃんの元気な声があがると。
「若君の初陣、拙者も参加します!」
「若君を守るため、忠勝参上!」
「竹千代さまの初陣、正信も泣きながら参加しますぅうううっ!」
「拙者も軍師になるためにがんばります!」
榊原康政、本多忠勝、本田正信……。
今日は柳生宗矩の声が続く。
皆着たか! 今日もがんばるか!
俺が思えば。
さらに今川姫武将たち……。
直虎、氏長、元景、岡部も乱入。
「竹千代ーっ! アーシも初陣する!」
「蹴り倒します」
「竹千代くん〜、差し入れ持ってきたよ〜」
「竹千代さまーっ! 応援しますっ!」
雪斎和尚は頭を抱えた。
「……ここは恋の戦場ではなく、演習場なのじゃが……?」
だから岡崎のヤンキー令嬢たちが暴れたらいかないので、半蔵+数正兄+鳥居忠次+平岩親吉の姉ちゃん、兄ちゃんたちが監視強化!
半蔵が俺の背後にぴたりと立つ。
近い!
俺が半蔵に苦笑いを浮かべると。
「監視中です」
「監視しなくていいよ!?」
俺がツッコミを入れと、さらに──
石川数正の兄ちゃん、鳥居忠次の兄ちゃん、平岩親吉の兄ちゃんたちが並んで立った。
「若君の安全を守るためです」
「若君の初陣を見守るためです」
「若君の未来のためです」
「なんでみんな監視!?」
「姫さまの命です」
半蔵の言葉を聞き、俺は氏真を睨むが、無視をされた。
◆直虎、陣羽織争奪戦を宣言
「竹千代ーっ! アーシが陣羽織選ぶ!」
「いや、選ぶのは氏真さまだよ!?」
「争奪戦だからねーっ!」
俺が直虎にツッコミを入れ、チビが反応すれば、氏真姫が扇子をぱんと閉じる。
「直虎。人質殿の陣羽織はわらわが選びます」
「ずるい!」
「ずるくありません」
「ずるい!」
「ずるくありません! わらわが選ぶのが通りです……」
◆氏長、蹴り倒しに来る
「竹千代! 直虎殿と騒ぐなど──。許さん! 蹴り倒します!」
「戦術演習中だよ!?」
「関係ありません」
氏長は本気で蹴りに来た。
半蔵が即座に割って入る。
「演習中の蹴りは禁止です」
「では廊下で蹴ります」
「廊下も禁止です」
「では庭で蹴ります」
「庭も禁止です」
「……蹴れませんね」
「当たり前です……。姫さまの許可なくば蹴れません……」
半蔵に叱られて、氏長は今日も押し込み、下を向いた。
◆元景、差し入れを持ってくる
「竹千代くん〜、お団子持ってきたよ〜」
「元景ちゃん!? 戦術演習中だよ!?」
「だって甘いもの食べると元気出るよ〜」
半蔵が割って入る。
「差し入れは禁止です」
「ちょっとだけ〜」
「禁止です」
「むぅ〜……」
元景が可愛く頬を膨らますから。
「団子ぐらい、いいんじゃない?」
俺が半蔵に尋ねると。
「氏長! 人質殿を蹴りなさい!」
「はい! 姫さま!」
《ドン!》
俺は駿府の悪役令嬢の嫉妬で氏長に蹴られ、奴は嬉しそうな顔をした。
◆岡部正綱、応援に来る
「竹千代さまーっ! 初陣頑張ってくださいっ!」
「いや、頑張る場面じゃないよ!?」
「初陣する竹千代さま、かっこいいです!」
氏真姫の声が響く。
まあ、響くように聞こえるが、岡部! お前! 近い! 近いぞ! と思えば。
「岡部。近いですよ?」
「は、はいっ!」
岡部は、やっぱり、駿府の悪役令嬢さまに叱られた。
その後……。
氏真姫は《《俺の初陣の陣形》》にまで口を出し始める。
演習が終わった直後──氏真姫は巻物を広げて待っていた。
「……半蔵、泰朝」
「はい、姫さま」
「人質殿の初陣の《《陣形》》ですが──他の令嬢が《《陣形を決めたい》》と言い出す可能性がありますわ」
まあ、凝りもしないで──元景、氏長、岡部、直虎、半蔵たち、令嬢軍団がざわつく。
「決めないよ!?」
「決めますね」
「決めますっ!」
「決めるよ!」
「決めます」
「決めるの!?」
「決めます」
また俺が、あいつらにツッコミを入れると、泰朝が反応を示すから。
氏真姫は真っ赤になって叫んだ。
「ですので~! 竹千代の初陣の陣形は、わらわが決めます~!」
「えぇええええっ!?」
俺が不満のある声をあげてやると。
「当然ですわ」
氏真姫がツンツンと悪役令嬢らしい反応を示すが、直虎が叫ぶ。
「氏真姉さま、ずるい! アーシも決める!」
「決めさせませんわ」
「決める!」
「決めさせません!」
「決める!」
「決めさせません!」
氏長が静かに告げる。
「姫さま。蹴り倒しますか?」
「蹴り倒しませんわ!」
元景が手を挙げる。
「竹千代くんの陣形、見守りたい〜」
「だめです」
元景に泰朝が不満を告げると、岡部が手を挙げる。
「応援したいですっ!」
「応援は昼間にしてくださいませ」
駿府の悪役令嬢さまの嫉妬に狂った顔を見て──
今日も数正の兄ちゃんは完全に胃を押さえていた。
「若君……これはもう……駿府の恋と戦の渦です……」
俺はは頭を抱えた。
(……なんで俺は、氏真姫に、戦国時代で《《陣形まで姫に決められる》》んだよ……これ、絶対に面倒なことになるやつじゃん……)
俺も凝りもしないで、恋愛ゲームを楽しむから、今日も胸の奥は、ほんの少しだけ熱かった。
だから駿府の恋乱戦は、さらに深い渦へと突入し、俺たちの連携度はあがっていった。
◇◇◇
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