第64話 尾張の悪役令嬢様との思い出(47)
「いっ、ひひひ」
「はっ、ははは」
「わっ、ははは」
織田信長を筆頭に池田恒興と前田利家の仲慎ましい嘲笑いが幼い頃の俺の耳へと《《あの頃》》は何度も聞こえてきたよ。
でッ、その虐めはね、吉姉さまの嫉妬心と憎悪……。
そう中身がアラサーおじさんの俺だから、美少女……、ひ弱な令嬢さまの佐々成政のことを俺が親し気に話しかけ、庇いもするから、吉の奴は自分の嫉妬心と憎悪が真っ青な晴天のように晴れるまで、成政のことを虐め尽くし、気が済むまで長槍叩きの刑は続く日々が続いた。
しかし《《あの頃》》の俺は《《織田家の人質》》……。《《尾張の悪役令嬢さま》》の性奴隷として提供された小姓の一人としての身分……。立場だから……。
悲惨な様子の佐々成政を見ても、幼い頃の俺は毎日の日常のように自分の顔色を青ざめながら猛禽類のように、自分の身体をブルブルと震わせながら怯え、見詰め続けることしかできなかったよ……。
マジでアイツ……。《《尾張の悪役令嬢さま》》こと……。織田吉法師姫の顔が嫉妬に狂った蛇女のように恐ろしくてね。
《《尾張の悪役令嬢さま》》が「あっ、はははははは」、「ひっ、ひひひひひひ」、「ほっ、ほほほほほほ」と憎悪を含んだ高笑いは、何処かの今川氏真と変わらないぐらい恐ろしいものだったから。
俺は織田信長のことが恐ろしいと、心から何度も思った。




