第62話 尾張の悪役令嬢様との思い出(45)
そして森可成や佐々成政と余り変わらないイノシシ武者で戦下手の前田利家の奴の動きも『ジロリ! ジロリ!』と睨みつつ、俺は奴等の気に押されないようにしながら様子を窺っていると。
俺の『成政の姉ちゃん、あのね?』の指示通り……。
そう《《尾張の悪役令嬢さま》》と、その小姓との距離を測りながらジリジリと勇気ある撤退をおこなっていた成政自身も、今の吉の煽りを聞き、異種格闘技で全敗を期している俺と共犯になるよりは、ここで吉達に負ける方が罰を受けないで済むと察して、それが得策だと思えば、《《尾張の情けない令嬢さま》》はね。
「いやぁ~ん! 姫様~、覚悟~~~!」
あいつ! 成政の奴は! 俺との約束──指示を無視……。
そう、あいつ! 成政の奴も尾張者だから! 岡崎のたぬきと心中をするのは嫌だ! と、俺のことを裏切り! 見捨てる策を弄して! 森可成のように竹槍を構えて吉達へと猪突猛進! イノシシ武者突撃を決行するから!
佐々成政の奴も刹那……。
「成政~、覚悟~!」
「えぃ~!」
「やぁ~!」
「あっ、はははははは」
「成政は阿保だな~!」と。
《《尾張の悪役令嬢さま》》の甲高い声音での威勢ある言葉や歓喜! 余は満足じゃ! の思いの言葉が、《《あの頃》》の俺の耳へと聞こえると。
「やぁー!」
「とぅ~!」
「突きー!」
「叩きー!」
「あっ、はははははは」
「わっ、はははははは」




