そして負け組は魔界へ呼ばれる
「よし、そろそろ出発するぞ!!!」
今日から勇者組は実戦訓練を行うために1ヶ月ほど簡単なダンジョン攻略をすることになっている。もちろん俺は待機である。戦う力もないのに来たって意味無いだろっという当たり前すぎる答えを勇者達(男子)に言われてしまったので仕方なく行かないことにした。実際死にたくはなかったから良かった。
「白野くん、行ってくるね!!!」
「え、おう、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!!!」
(なんだ、いきなり北条に話しかけられたが...フラグでも立ったのか? ははは、なわけないか)
「さてと、これからどうするか? あまりある時間内で何かしておかないとなー」
「あの、もしお暇なのでしたら少々手伝って頂けませんか?」
そう言って話しかけてきたのはメイドであった。
「はい?え、まぁ別に構いませんけど」
そう、この時の安返事が間違いであったのだった。その後、翔希はメイドの手伝いをするのであったが、その手伝い内容は余りにもハードなものであった。まず、勇者達の部屋の掃除、その後は城全体の掃除、これだけで午前中は終わってしまい、更に午後からは王直属の土地での農作業に終われ1日が終わってしまったのだった。
「ま、まぁ、明日くらいからまた訓練始めればいいかな、はは、はははははは」
もちろん次の日から手伝い三昧であった。困り事に対して断りきれない性格の翔希は結局全て受けてしまい、4週間も手伝いごとに精を出してしまったのであった。その結果、翔希にはある変化が訪れたのだった。
「えっと、この4週間を手伝い事につぎ込んでしまった訳だが、これがその結果としてこれか、はぁ」
夜、翔希は自分の部屋にて自分のステータスを確認していたのだが、
白野翔希(17)
レベル:20(MAX)
天職:契約者
筋力:80
敏捷:45
魔力:0
知力:400
幸運:-35000
才能:掃除洗濯料理家事全般、剣術(仮)、弓術(仮)、農作業、心眼(仮)、鍛治(仮)、言語理解
US:努力は実を結ぶ、契約、???、???
弓術などは合間を縫ってできる限りをやっていたため手入れることができた能力である。レベルに関しては2週間ほど農作業してる合間にMAXになってしまったが...
「いつの間に天職が出来てるし!!! ていうか、改めて俺のUS凄いな。やったことなんでも手に入れることが出来るんだな!!!それにUSって増えることもあるだな。そしてなんと言ってもこの『契約』ってUSだよな。ええっと詳細はと...」
契約:自身に誠心誠意忠誠を誓うものを自分のものとする能力、忠誠を誓ったものは自身への好感度に応じてステータスや能力を倍にすることができるようになる。制限はない。
「つよっ!!!ただ、俺に忠誠を誓うってのが無理な話な気がするな〜、まぁともかく、これ以上強くはなれないが、 いろんなことに手を出していけば、自ずとその力も手に入れられるとね。とりあえず弓術と剣術は(仮)が取れるようにしないとな」
ピカ!!!
そんな感じに今後の自身の方針を決めていたところ、突如として魔法陣が自身の足元にできた。
「え、は、ど、どういうことだこれは~~〜~~~〜~~!!!」
そうして翔希は異世界にいながらも、また転移をしてしまうのであった...
しばらくして目が覚めた翔希は辺りを見渡して見るが、どこかこう、薄暗い城の中にいたのだった。
「な、なんだ!!! 暗っ!!! ここどこ?」
そうしていると、背後から声がした
「よくぞ来た、選ばれし勇者よ」
「へ?ぎゃーーーー!!!」
そう答えたのは骸骨の甲冑を被った化け物だった
(ひ、ひぇぇ、どこぞの暗殺者じゃねーかよ!!! こぇぇぇえ(泣))
「そう怯えるな勇者よ、我々はただ主を喚び寄せただけだ、怯えるでない。」
(怯えるなって、無理あるだろ〜)
「アグラヴァイアス!!!それは少し無理がありますよ、あなた怖いですもの。その申し訳ございません勇者様。脅かすつもりはなかったのですが」
そう言って骸骨甲冑さんの後ろから透き通るような美しい声を発し治めるように出てきたのは銀髪のツノの生えた美少女だった
「ほぇーーーー・・・はっ!い、い、いや、だ、大丈夫でげふ、です。ん、んん、そ、その、俺の名前は白野翔希です。まずここはいったいどこ?それとあなたはいったい?」
そう言って俺は目の前の銀髪の美少女に訪ねた
「申し遅れました、私はベルリーナ・レングスと申します。ここ魔界にて魔王をしております。この者はアグラヴァイアスです。どうぞお見知りおきを」
「・・・・・・・・・・は?」
(今この子魔王って言った? それと魔界だって、なんじゃこの急展開はーーーー!!!)
「そして、あなたをここにお喚びした理由は、あなたにはこの魔界を救って頂くためにお喚びしました」
「え?魔界を救う?何故に?魔界って魔王軍がいて人間から脅威とされるくらい強いんじゃないのか?」
俺は当たり前の疑問をベルリーナに言ってしまった。
「今、魔界は衰弱しきってしまっているのです。人間族の突如としての総攻撃に対し、魔界の兵達をたくさん失い、魔界七将も既にアグラヴァイアス以外は皆、封印されてしまい、まさに崖っぷちなのです。今この魔界を救えるのは契約の力を持ったあなただけなのです!!!」
「そ、そんなことになってたのか...」
(・・・なんかすげぇのキターーーーー!!! すげぇイベント発生しちゃってるんですけどーーー!!!やべぇ、俺、魔界の勇者になっちゃった!!!というか、魔界救うって俺、人間なんですが、大丈夫かな?)
「えっと、とりあえず俺は人間族に喚ばれた勇者であったんだけど、そこの所はどうすんだ?」
「え!人間族に喚ばれていた!!!」
「あ、あぁ。俺達の住んでいた地球からまず、この世界のラクターナ王国に転移させられて、その後に、この魔界に来たんだけど...」
「そ、そんな〜、一足遅かった...で、では、力を貸してはいただけないのですか?」
「え、えっと、まぁどうせやるしかないし、やれるだけはやるよ」
(こんな可愛い子に涙目+上目遣いじゃ断れないわな)
「ほ、ホントですか!!! それはホントですね!!!」
「あ、あぁ、ホントホント、というか近い...」
(めっちゃいい匂いした!!! 胸当たった!!! わぁーい!!!)
「はっ!も、申し訳ございません翔希様」
「(しょ、翔希様)、んん、たださ、俺は人間だし、ステータスも貧弱極まりないけどそれでもいいのか?」
「大丈夫です。翔希様の持つ契約の能力があるだけで十分ですから!!!」
俺には思い当たる部分があった。つい先程、ステータスを確認した際、USに新たに『契約』という力が手に入っていた。しかし、それは先程というからに、勿論どんな能力なのか全くとして理解していないのであった
「そう、なのか。ただ、そ、そのさ、言い難いんだけどさ、その契約の力って、ついさっき手に入ったばかりの能力なんだけど...」
「はい、知っております」
「ん?どういうことだ?」
つい先程能力が開放されたのを知っているということに俺は疑問を感じた
「私達は契約の力を持つものが現れてから、その能力を持つものを喚ぶための召喚魔法を使用したのですから」
「それに、あなたのステータスが弱いと言っても、あなたが使役するパートナーを召喚すればよろしいのですよ」
「パートナーを召喚する? 俺にそんな力があるのか?」
「はい、この魔界に残る記録によると、契約の力を持つ者には必ず一人のパートナーが存在し、その者との主従契約を結び、絶大な力を使い国を治めたと書かれております。パートナーとは、簡単に言えば一番の側近ということですね!!!」
「ぜんぜん簡単言えてないにけどな!!! まぁ要するに、一番の味方ってことに変わりはないだろうしな」
「ええ、その解釈でよろしいかと。それと、召喚は一度しか行えませんが、契約に関しては実在するものなら何でもできるはずですよ!!!早速ですが、翔希様には召喚契約を行ってもらいたいのですが」
実際俺は不安であったが、現在、俺自身に戦う力が無いに等しいので、使えるものは全部使うということで、割り切った。
「よし、とりあえず分かったけど、まずどうやって召喚するの?」
「それでしたら、今、翔希様の足下の魔法陣をお使い下さいませ。詠唱はこの本に書かれた通りお読みくだされば大丈夫です」
「あぁ、これね、分かった」
そう言って俺は足下の魔法陣を使い、詠唱を始めた
『我、契約の下、その魂を我が元に喚び寄せん、我が下に来たれ、永久に語り継がれし者達よ、素となる我が魂、己が血肉は汝を求めん、その誇りに、その生涯に、我は全て賭けようぞ、いざ来たれ、我が英雄よ!!!』
そう告げたあと、魔法陣から眩い光の柱が現れ、
『2人』の人の姿が見えたのだった
「え?2人いる?どういうことですか???」
「い、いやぁ、俺に聞かれてもな〜」
もちろん、俺もなぜ2人いるかは理解出来ていない。というよりも、俺は、美少女が来てくれることを祈っていた。なぜなら、せっかく自身に忠実なパートナーが出来るのであれば美少女がいいと思うのは男の性だよな、などと下衆なことを思っているのであるだ。その、周りを見ろと言いたくなるのは抑えてくれ...
そうして、光が止むと、改めて姿を確認することができた。俺達の目の前に現れたのは2人の金髪の美女であった。俺はあまりの美しさに目を奪われていたのだった。
そのうちの1人、騎士らしい格好をした美女が口を開けた。
「私を喚んだのは貴様か? 」
「え、あっ、はい」
「ふっ、そうか」
そう言ってはにかむ姿は美しさとまた、可愛らしさを魅せたのだった。
「我が名は、騎士王、アーサー・ペンドラゴン、召喚に応じてここに蘇った。これより我が剣は貴様の物であり、我が誓とする。ご主人様よろしく頼むぞ」
「え?・・・・・・・えっと、あ、あの『アーサー・ペンドラゴン』は、男じゃなくて女性だったんだな、は、ははは」
俺は目の前に現れた美女が、かの騎士王『アーサー・ペンドラゴン』であるといい、驚いた。
「ふん、それは貴様の世界で勝手に書かれたものだ。元より私はあのような聡明な王ではなく、暴君であったのだからな。王とはそういうものだろ」
「お、王というのはそういうものなのでしょうか???あ、あと、翔希様!!! 大丈夫ですか?」
「お、おう、少しびっくりしただけだ」
(やばいな〜アーサー召喚とかアニメみたいなことが起きちまったーー!!!)
そうしているともう1人の方も口を開いた。
「ふーん、あなたがあの『アーサー王』なのですね、そして...」
「ん?」
そう皮肉めいたように言ったのは、黄金の旗を持ち、武装した金髪美女だった。するとこっちを向いた途端、キラキラしたような?目で俺を見てこう言い出した。
「申し遅れました、私の名前はジャンヌ・ダルクと申します。あなたが私のご主人様ということですね!!!」
「え、まぁそうだと思うが、とりあえずいきなり抱きつくな!!!」
「む!おい貴様!私のご主人様から離れろ!!!」
そうアーサーが言うと腰に収めていた剣を引き抜き、ジャンヌ目掛けて切りつけようとした。ジャンヌはそれを綺麗に躱すと、
「ちょっと、危ないですよ!!!『私の』ご主人様に当たったらどうしてくれるんですか!!!」
「『私の』ご主人様に当てるわけ無かろう。貴様を切ろうとしたのだからな!!!」
「む!誰があなたのですか!!! この方は私のご主人様です。あなたはさっさと天上に帰ってください。ご主人様が喚んだのはこの私、ジャンヌ・ダルクです!!! 」
そう言うとジャンヌも持っていた旗を槍のようにかざして応戦し始めた
「世迷言を言うなよ田舎娘!!! こいつが喚んだのは私の方だ。貴様こそさっさと天に帰れ!!!」
こうして2人は突如として闘いを始めてしまった。
「ど、どうしてこうなったんだ...」
翔希がこう吐くのも無理はない。なんと言っても今目の前で突如として起きた翔希争奪戦をしているのが、かのブリタニアの伝説の王『アーサー・ペンドラゴン』、アーサー王伝説に登場する主な主人公、騎士の中の騎士、キングオブキングスを語るような最上の王様である。もう一方はフランスのオルレアンの百年戦争を終結に導いた伝説の聖女、『ジャンヌ・ダルク』聖女といえば彼女を指す者も多く、田舎に住む少女であったが数奇の運命に導かれ聖女として名を馳せた英雄中の英雄である。そんな二人に突如として取り合いにされる翔希は頭が混乱してならなかった。叙事詩通りなら召喚されるのは1人であったはずなのだが、蓋を開けると2人も召喚してしまったのである。それも、伝説を残すほど有名な英雄達をだ。これで混乱しない現代人はいやしない。まず、召喚される人間はパートナーを召喚できると言われただけのため、英雄を召喚出来るなど一言も言われていないのである。貧弱ステータスで幸運値がマイナスに天元突破してしまった翔希だからこそ起きた、『不幸中の幸い』。まさにこの時から翔希は運命に導かれていたのであった。そんなことはつゆ知らず、この状況をどうにかしようと動いたのが、美少女魔王ベルリーナであった。
「ふ、2人とも落ち着いてください、ここで暴れないでください!!! そ、そうだ、アグラヴァイアス!!! この2人止めてください!!!」
「了解した」
すると、先程から全くの傍観をしていたアグラヴァイアスが、突如として全体を覆い尽くす程の殺気を出しながら、持っていた剣と盾で2人の間に割って入っていった。
「どけ、邪魔だ!!!」
「誰ですかあなた!!! 邪魔です」
2人はアグラヴァイアスを退けようとするも、完全にに受けきり踏みとどまった。
「ここで暴れるな、ここは魔王城の中だ。やるならば城外でやれ」ゴゴゴゴゴ
「なに!」
「な!こんなことが!!!」
「ま、マジかよ。すげぇ」
驚く理由としては、伝説の英雄の戦闘力もさながら、その2人を止めたアグラヴァイアスに対して驚いていた。
「ふふ、アグラヴァイアスは魔界七将の中でも1番武勇に優れた方なのです。それでいて常に冷静でいられるために、これまでの魔王は皆、彼を頼っていたのですよ」
「そうなのか、というか何歳だよ!!!」
「1万は超えている」
「マジですか...」
そうしていると、先程の2人が、
「ご主人様よ、迷惑をかけたな、すまない」
「ご主人様にご迷惑を、本当に申し訳ございません」
そう言って、謝ってきたのだ。かの英雄がこうも簡単に頭を下げる姿に翔希もビビっていた。
「べ、別に迷惑はかかってないから頭上げて!!! 大丈夫だから」
「ありがとう、ご主人様」
「ありがとうございます、ご主人様!!!」
2人の美女の最高すぎる笑顔を喰らい、照れてしまう俺であった。
「ところで、私達のどちらがご主人様のパートナーになるのだ?ご主人様、今のうちに早く決めろ」
「んなこと、言われてもな〜」
(どちらを選んでもDEAD ENDになりかねない気がしてならないんだけどぉ!!!というか、わざわざ選ぶ必要あるか?)
「そうだ!!!それなら、いっそ2人ともパートナーってことで万事解決じゃないですか?」
『・・・・それだ(です)!!!!!!』
こうして俺は突如として魔界に喚ばれ、英雄の主となってしまったのだった。そして、これから起きる面倒事に巻き込まれていくのであった。