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刻印戦士達の異世界戦記  作者: 秋雨しずく
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プロローグ


――――――――――。


 サァーッっと風が駆け抜けて草木が揺らめく音がする。

 日差しがさして温まった体を、なでるように少し涼しい風が通っていく。

 顔に掛かる暑すぎない日光が、頬に当たる煩わしすぎない風が、自然の優しさというものを体現している、そう思える。


 嗚呼、なんという理想的な日向ぼっこか。

 昔、孤独という名の元に戦い続けた学園生活で日向ぼっこというものをやってみたことがある。

 アレはだめだ。

 地球温暖化なのか、住んでいた地域の標高が高いせいなのかしらんが、唯々照りつける太陽にムカついて仕方なかった。

 それと比べれば今現在俺の天空に瞬く、太陽と月のような二つの星がもたらす光は理想的な温度と眩しさだ。


 ビバ、日光浴。

 なんもかんも解放された俺のストレスフリーの状況にマッチした素晴らしい作業だ。


 むふーっ、と深呼吸して味わうようにして時の浪費を行う。

 忙しすぎて死にそう、というわけでもなかったが、どうしたってストレスに苛まれていた事は事実だったのだ。積もり積もった心労は、自己管理出来ていたとはいえ取り除けていたわけではない。

 意識して肩の力を抜けば、ドッと疲労感が押し寄せてくる。閉じた瞼も多少重たくなるが、寝る気はないのでリラックスだけする。気分的には心地よい、というだけの話だ。


 鳥のさえずり。甘い花の臭い。向こうでは常に何かしらの騒音が耳にノイズを入れていたが、ここは静かな草原。近くに軍をおいているとは言え、喧騒の枠の外の世界である。

 静かな、優雅なひと時を噛み締めるように味わう。



 もともと性格はのんびりしているつもりはあるが、これでもせっかちなタイプなのだ。

 数分ほどで飽きが来て、そろそろ起き上がろうか、というタイミングでポクポクと馬の蹄の音が響いてくる。

 少し離れたところで音が止まると、下馬したのか今度は草を踏みしめてこちらに近づいてくる足音が。


 知っている足音なので敢えて目をつぶって眠っている装いで待ち構える。

 相手は直前で立ち止まると、少しの後顔面に降り注いでいた日光が塞がれる。コラコラ、それでは起きてしまうぞ。人も動物も明かりを点けたり消したりすると結構気が付くのだから。

 気遣いのエキスパートたる俺の注意書きを、心の中でさとしてあげつつ俺は目を開ける。さも今起きたかのように。


「起きましたか。」


 目の前にあるのは美麗と言うべき整った中性的な顔つきの人物。おまけにかっこいい感じのハスキーボイス。エイラだ。

 人の寝顔を覗き込んでいたのか結構近くの位置にあった顔を避けるようにして体を起こす。俺は今寝ていたのだから多少ぶすっとしていた風が自然だろう。

「飛び起きたら痛いだろうから覗き込むのはやめんか。」

 俺は頭についた草や土を払いながらエイラに注意する。


「大丈夫ですよ。意外と寝起きも理性的なのがムーさんですから。」

 さも問題ない、という風に表情変えずに言ってくれる。

 エイラはしゃがんだまま、しっかりと目を合わせるように淡々としている。その目は薄いレモン色に輝いているが、視線が俺をがっちりと捉えて離さない。

 俺はというと寝ているふりをしていた後ろめたさから、思わず必死にそらしてしまう。

 そんな俺を感じ取ったのか、エイラは一息吐くと立ち上がって手を差し伸べてくる。

「行きましょう。元とはいえ、軍の最高責任者がこんなところで――」

   「護衛も付けず」

       「兵卒にちょっと出てくるとだけ伝えて」

             「居なくなるなどあってはならない話です。」


 差し出された手を強引に引かれながら立ち上がると、手をつないだまま有無を言わさず軍馬の方に連行される。ヤバイ怒ってらっしゃる。

「いや、もう少しで戻るつもり―――」

「どっちにしてもダメです。」

 彼女―――そう、エイラはこんなにも女っ気が少ない、胸も悲しく肉付きのない身体で、声とか顔つきとか160cmとかいう女性にしては高い身長で誤解されやすいが、立派な女性である。

 ―――で、その彼女をなだめるつもり―――というよりも口が勝手に回って言い訳をするが、ピシャリと止められてしまう。

 全く、その強引さはどこの誰に似たのか。

 やれやれこれ以上は刺激するだけだなと思いながら引きづられていく。



 憮然とした雰囲気の彼女の後ろをついていくと、握られた手袋越しの形を意識させられる。

 なで肩の痩せた体つきも相まって、文字通り女の子なのだ。

 彼女はこの世界で最も頼りになる存在ではあるが、その背中に背負わせているものを想像すると、俺は罪悪感で潰されそうになる。

 俺自身もさほど年はとってないが、むしろ彼女とさほど変わらないガキなのだが、それでも俺のやってきた事と、これから行うことは罪深いことなのだと改めて意識させられる。

 そんな気持ちが湧いてきたせいか、脈絡もなく強く手を握りしめてしまう。

 俺を連れて行く彼女の肩がびくりと跳ねるが、足は止まらない。首が少し動いて俺の方からは表情が見えなくなってしまった。

 

 俺はさらに強く握り返された手を感じながら思うのだ。

 ―――頼りないリーダーでごめんな。



 ――――――これはとある異世界に来た少年が織り成す、女の子のための戦記である。



書き溜めなどしていない―――が、もういい加減妄想だけ膨らましてないで書いちゃえよ。と誰かが囁いてくるので書いちゃいました。

拙い文章で申し訳ないのですが、忙しい日々の合間に書き上げたいと思いますので、よろしければ是非お楽しみいただければ、と、思います。

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