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第6話

たどり着いたのは、桜ヶ丘学園だった。

「ここって、エリート学校じゃないか!」

桜ヶ丘学園は同じ地域の学校と比べて偏差値、学費、倍率共に高いことで有名な私立学校だった。

「私とあの人は同じ学校に通う幼馴染よ。」

(幼馴染のくせに、戦うって一体何があったんだ…)

「何してるの、さっさと行くわよ。」

何食わぬ顔で学園内に入っていく春奈は、いつまで経ってもついてこない紫晃にしびれを切らした。

「奥宮さん。」

「さん付けしなくてもいいわよ。」

「じゃあ、奥宮。」

「何?」

「緊張して、体が動かない…」

「は?」

いきなり自分には縁のなかったエリート校に連れ出され、その上殺されかけた敵を見に行く状況に紫晃はこの上なく緊張し、体が硬直した。



それから、ホワイトエンジェルのところまで行くのに紫晃達は多くの通り過ぎる生徒の注目を浴びた。校門からびくとも動けない紫晃を見て、仕方ないわねと言いながら春奈は紫晃の手を引っ張るが全く動かない。背中から押しても一歩も歩かない。そして、春奈はどこからか台車を持ってきて、紫晃を蹴りながら台車に載せ、台車をつきながら移動した。

通り過ぎる学生は、その光景に目が離せなかった。学校の華である奥宮春奈が、顔を真っ赤にし、体育館座りをした殺し屋みたいな男を台車に載せて歩いているのだから。


「着いたわよ。」

冷めた目で紫晃に言った春奈が連れてきた先は、とある教室だった。

「ここに居るのか・・・」

(声が大きいわよ。もっと小声で話して。)

(す、すまん。)

紫晃はそっと台車の上からのぞきこむようにして教室の中の様子を伺ったが、誰もいなかった。

(誰もいないじゃないか。)

(え?今日は教室で勉強するって言ってたのに。)

二人がもう一度、覗き込んでいると、

「・・・何してる?」

いきなり後ろから声がして、二人は驚いた。その拍子に春奈は、手すりがわりにしていた台車の持ち手を強く押し、手放して教室の入口で前のめりになってつまずいた。

「な、ななな直人じゃない!!教室にいたんじゃなかったの?」

「いや、息抜きに図書室に寄ってたんだよ。」

春奈が見つめる先は森下直人、ホワイトエンジェルだった。

「どうしたの?僕に用?」

「あー、うん。ど、どうしてるかなーと思って!!」

「ところで、あの人大丈夫?」

「・・・あ。」

時すでに遅し。台車に乗せられたままの紫晃は、そのまま押された勢いで、廊下をスムーズに流れていった。だが、その先に待ち受けていたのは階段だった。後ろ向きに進んでいく台車を止めようとするが、体育館座りから正座に体勢を変えてそのままでいた紫晃は肝心なときに、足が痺れて動けない。そして待ち受けられた運命をありのままに受けた。紫晃の体は二回転半に及ぶ回転技の末、廊下の壁に激突した。


紫晃は目を開くと、真っ先に春奈の姿が目に入った。

「ご、ごめーん。」

手を合わせて心配そうに見つめる春奈は、取り敢えず紫晃に手を伸ばす。

「どんだけ強く押せば、あんなに台車が進むんだよ・・・」

春奈の手を取った紫晃は強打した腰に手を当てながら、ゆっくりと立ち上がった。

「春奈、彼は一体誰だ。」

そう言い放ったのは、春奈の後ろにいたホワイトエンジェルだった。

先ほどの紫晃の奇行の数々を目にして、ホワイトエンジェルは完全に紫晃を疑っていた。

「あ、えーえっと・・・お俺は・・・」

言葉を濁らす紫晃によって余計にホワイトエンジェルは眉間にしわを寄せた。

「か、彼は、わ、私の舎弟よ!!」

さらに、爆弾発言が春奈によって放たれた。

「しゃ、しゃて・・・」

言葉を失ったホワイトエンジェルは、キッと紫晃を睨んだ。

「お前、春奈の何が目当てなんだ!!」

「ちっ、違う!!そういうつもりじゃないんだ!!」

爆弾が次々と放たれる。

「直人、こいつは一見殺人兵器みたいな顔をしてるけど、とっても面白いのよ。ほ、ほら、腹踊りだって得意なんだから!!」

「・・・」

「黙ってないで、腹踊りしなさいよ!!」

その後、紫晃は二度とこの学園に訪れないと誓った。

桜ヶ丘学園では、顔を真っ青にした美女と、笑い転げる美男と、階段の踊り場で腹踊りをする殺し屋の奇妙な光景の話で持ちきりだった。


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